堕天使と悪魔は偽りの姫を欲しがる

『ごめん彩雫、30分くらい遅れそう。すぐ片すから待ってて』


「……今度は何してんの」


『ん〜?害虫駆除かな』




お出かけから帰ってきて、ちょうどドレスの準備を始めていたとき。私のスマホに月からの着信があった。


遅れるって自分から誘っといてなんなの?なんて考えは少ししか浮かばない。


だって───




「スマホってけっこう音拾うんだよ」


『あ〜、もしかして聞こえちゃってた?……【Anemone】の奴らだから気にしなくていいよ』


「……いつか死んでもしらないよ」


『だいじょーぶ、俺はこんな雑魚にはやられないから』




人が心配してるというのに、月は余裕そうに笑ってる。


やられないなんて、そんな保証はどこにもないのに。


いつもそうだ。心配してる私の気持ちなんてちっとも考えてない。




『椎堂!』




スマホの向こうでガンっと鈍い音がして、通話が切れた。


最後、"椎堂"と叫んだ男は敵?


とにかく、月に何かがあった、というのは間違いないと思う。




「だから言ったのにっ」




パーティーもドレスもそんなの知らない。


月───!


それだけ考えながら、スマホだけ掴んでマンションを飛び出した。


無駄に高いマンションのほぼ最上階が私と月の家。


エレベーターを待つ時間がじれったい。




「ちょっ、どこ行くんすか!?」


「すぐ戻るから!」
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