終わりから始まる恋を、君と
「使うよ」
静かな声。
「このままじゃ、ルカ逃げられないでしょ」
ルカの瞳が揺れる。
「逃げる必要なんて――」
「ある」
きっぱりと遮る。
雫の声は、思っていたよりも強かった。
「ルカは私と一緒に逃げるの。」
一瞬の沈黙。
雫は言葉を続ける。
「今のルカじゃ、歩くだけでも限界だよ」
ルカの唇が、わずかに震える。
否定しようとして――できない。
現実だった。
雫はその間に、そっと彼の腕に触れた。
「だから、治す」
「……っ、雫……」
「お願い。動かないで」
その言葉は、命令じゃなかった。
懇願に近かった。
ルカは一瞬だけ目を閉じると、苦しそうに歯を食いしばった。
けれど――抵抗する力は、もうほとんど残っていなかった。
雫は静かに治癒を始めた。
光が、傷に触れていく。
焼けただれた皮膚が少しずつ塞がり、
裂けた痕が薄れていった。
ルカの身体が、わずかに強張る。
痛むのではない。
“何かを受け取ること”自体に、慣れていないのだ。