時をかける恋幕 二人の推し活恋文
「あ、あー……!」あいのすけは、あやうく「未来から」と口走りそうになった。ちかよが咄嗟に彼の足を踏みつける。
「我ら、遠い国を渡り歩く『旅の芸人』にございます! 船が難破いたしまして、着の身着のままで江戸へ流れ着いた次第で……」
「さようにございます! 芸の修行中に道に迷ってしまいまして……」
苦し紛れの嘘に、平蔵はフッと口角を上げた。
「旅の芸人か。道理で、その派手な出立ちよ。まあよい、行く宛がないのであれば、しばらく我が家で手伝いでもしながら、羽を休めるがよい」
「困った時はお互い様。あいのすけさん、ちかよさん。ゆっくりしていってくださいね」
平蔵を見つめる久栄の眼差し、そしてそれに応える平蔵の柔らかな表情。二人の間に流れる「夫婦の絆」を目の当たりにし、二人の現代人は確信した。
「ありがとうございます! 掃除でも薪割りでも、何でもやらせてください!」
(よし。今日から私たちが、この尊いお二人を全力で守り、推し抜いてみせる!)
ちかよは心の中で強く誓った。
江戸の初夏の空に、あいのすけの威勢の良い返事が響き渡る。
歴史オタクな二人と、情に厚い火付盗賊改の日々は、こうして幕を開けたのであった。
ご提示いただいた脚本のシーンを、時代小説の筆致で描写いたしました。
第六章 長谷川家の新しい風
朝の柔らかな光が、長谷川平蔵の屋敷の居間に差し込んでいた。
その光の中で、あいのすけとちかよの二人は、平蔵と久栄を前に深く畳に額をこすりつけていた。
「昨夜(よべ)は、思いがけぬお助けをいただき……。おかげさまで、どうにか露を凌ぐことができました。この御恩、生涯忘れません」
あいのすけの言葉は震えていた。着慣れぬ格好をしながらも、その作法には真摯な響きがある。平蔵は、煙管(きせる)を傍らに置くと、静かに問いかけた。
「……して、あいのすけ。今日(きょうび)から身を寄せる当てはあるのか?」
その問いに、隣にいたちかよが消え入るような声で答える。
「……いいえ。恥ずかしながら、行くあても、頼る縁(えにし)もございませぬ」
二人の切迫した様子に、平蔵の妻、久栄は穏やかな微笑みを浮かべた。
「ならば、いっそこの家に留まってはいかが? ちょうど手の足りぬこともあって困っていたところなのですよ」
平蔵も力強く頷く。
「左様。外へ出れば風も冷たかろう。落ち着く先が見つかるまで、ここで厄介になればよい」
「えっ……よろしいのですか!?」
驚いて顔を上げたあいのすけに、平蔵は豪快に笑ってみせた。
「長谷川平蔵、二言(ふたこと)はない。よし、決まりだ」
庭先に出ると、平蔵は屋敷にいた配下の木村忠吾と、息子の裕助を呼び寄せた。
「忠吾、裕助。今日からこの二人がここに住まうことになった。あいのすけと、ちかよだ。仲良くしてやってくれ」
紹介された忠吾は、二人の姿を見るなり目を丸くした。
「ほう、これはまた目の覚めるような美男美女で! 拙者、木村忠吾と申します。何なりとお申し付けくだされ!」
「父上、賑やかになりますな。よろしく頼みますよ」
裕助もまた、新しい家族を歓迎する柔和な表情を浮かべていた。
奥の間では、久栄が二人のために新しい着物を用意していた。
「その異様ななりでは、お役所の方々も腰を抜かしてしまいます。まずは、この着物に着替えなさいな」
「ありがとうございます」
「我ら、遠い国を渡り歩く『旅の芸人』にございます! 船が難破いたしまして、着の身着のままで江戸へ流れ着いた次第で……」
「さようにございます! 芸の修行中に道に迷ってしまいまして……」
苦し紛れの嘘に、平蔵はフッと口角を上げた。
「旅の芸人か。道理で、その派手な出立ちよ。まあよい、行く宛がないのであれば、しばらく我が家で手伝いでもしながら、羽を休めるがよい」
「困った時はお互い様。あいのすけさん、ちかよさん。ゆっくりしていってくださいね」
平蔵を見つめる久栄の眼差し、そしてそれに応える平蔵の柔らかな表情。二人の間に流れる「夫婦の絆」を目の当たりにし、二人の現代人は確信した。
「ありがとうございます! 掃除でも薪割りでも、何でもやらせてください!」
(よし。今日から私たちが、この尊いお二人を全力で守り、推し抜いてみせる!)
ちかよは心の中で強く誓った。
江戸の初夏の空に、あいのすけの威勢の良い返事が響き渡る。
歴史オタクな二人と、情に厚い火付盗賊改の日々は、こうして幕を開けたのであった。
ご提示いただいた脚本のシーンを、時代小説の筆致で描写いたしました。
第六章 長谷川家の新しい風
朝の柔らかな光が、長谷川平蔵の屋敷の居間に差し込んでいた。
その光の中で、あいのすけとちかよの二人は、平蔵と久栄を前に深く畳に額をこすりつけていた。
「昨夜(よべ)は、思いがけぬお助けをいただき……。おかげさまで、どうにか露を凌ぐことができました。この御恩、生涯忘れません」
あいのすけの言葉は震えていた。着慣れぬ格好をしながらも、その作法には真摯な響きがある。平蔵は、煙管(きせる)を傍らに置くと、静かに問いかけた。
「……して、あいのすけ。今日(きょうび)から身を寄せる当てはあるのか?」
その問いに、隣にいたちかよが消え入るような声で答える。
「……いいえ。恥ずかしながら、行くあても、頼る縁(えにし)もございませぬ」
二人の切迫した様子に、平蔵の妻、久栄は穏やかな微笑みを浮かべた。
「ならば、いっそこの家に留まってはいかが? ちょうど手の足りぬこともあって困っていたところなのですよ」
平蔵も力強く頷く。
「左様。外へ出れば風も冷たかろう。落ち着く先が見つかるまで、ここで厄介になればよい」
「えっ……よろしいのですか!?」
驚いて顔を上げたあいのすけに、平蔵は豪快に笑ってみせた。
「長谷川平蔵、二言(ふたこと)はない。よし、決まりだ」
庭先に出ると、平蔵は屋敷にいた配下の木村忠吾と、息子の裕助を呼び寄せた。
「忠吾、裕助。今日からこの二人がここに住まうことになった。あいのすけと、ちかよだ。仲良くしてやってくれ」
紹介された忠吾は、二人の姿を見るなり目を丸くした。
「ほう、これはまた目の覚めるような美男美女で! 拙者、木村忠吾と申します。何なりとお申し付けくだされ!」
「父上、賑やかになりますな。よろしく頼みますよ」
裕助もまた、新しい家族を歓迎する柔和な表情を浮かべていた。
奥の間では、久栄が二人のために新しい着物を用意していた。
「その異様ななりでは、お役所の方々も腰を抜かしてしまいます。まずは、この着物に着替えなさいな」
「ありがとうございます」
