【大河ドラマ】忙しい人のための新・安倍晴明物語
第1話 仙女玉屑
延長八年(930)夏、満月丸(後の安倍晴明)の屋敷に陰陽師の賀茂忠行が訪ねてきた。忠行は、満月丸の父安倍益材と親交の深い陰陽師であり、暦家でもある。明日は七月七日で、七夕であると同時に満月丸の誕辰でもある。今年、この日は暦道において最凶の日である。満月丸は丸一日屋敷の中に籠もり、物忌をしなければならない。一歩でも屋敷の外に出れば、大いなる災いが降りかかる。満月丸は厳重に物忌をすると忠行に約束する。
七夕の日、満月丸は忠行の言いつけを守り物忌をしていた。日付が変わるまであと一刻というところで、彼は縁側に出て星空を眺めた。せっかくの七夕に二星の逢瀬を見ないのはもったいないと思ったのである。その時、一筋の流星がゆっくりと落ちていった。その星を見た瞬間、晴明は突然胸が苦しくなって倒れてしまう。
気がつくと、満月丸は屋敷ではなく川辺に横たわっていた。彼は眼前に広がる川を三途の川と思い込み、自らの死を悟って絶望する。
対岸では、一人の仙女が暇を潰していた。彼女は泰山府君の娘玉屑で、兄である炳霊帝君の帰りを待っているのだ。玉屑は川の向こうに人の気配を感じ、獄卒の制止も聞かず橋を渡る。
満月丸が辺りを散策していると、向こうから玉屑が近づいてきた。彼は玉屑にこう尋ねた。「あなたは私と同じ死者ですか。それとも、あの世の案内人ですか」。満月丸を死者だと思い込んだ玉屑は、簡単に自己紹介をした後で彼の手を引こうとする。満月丸は玉屑の手を振り払い、「まだ死にたくない」と言って逃げ出す。玉屑は満月丸に冥界の事情を説明する。命日のうちに対岸に着かなければ、忘川を漂う遊霊になってしまうと。この川の本来の名は忘川で、日本人が勝手に三途の川と呼んでいるだけだった。満月丸は観念して玉屑に身を委ね、彼女の手を握る。その時、彼は全身に電流が走ったような不思議な感覚になった。一方、玉屑は平然としており、満月丸と同じ感覚を抱いたようには見えなかった。
対岸に向かうまでの間、満月丸は転生後の人生に思いを馳せた。すると、玉屑から衝撃的な事実を打ち明けられる。これから満月丸は玉屑の魂の一部となり、永遠に彼女の中で生き続けるのだと。不気味な話だと感じた満月丸は玉屑の手を振り払い、引き返そうとする。
その時、日付の移り変わりを知らせる鐘が鳴り響いた。二人はまだ橋の上にいて、対岸にたどり着いていなかった。満月丸が動揺していると、彼の全身が淡い光に包まれていく。玉屑が満月丸の手を取ろうとしたところで、彼の姿は完全に消えてしまった。
目を覚ました満月丸は、屋敷の縁側に横たわっていた。彼は現世に生還したのだ。ほっとしたのも束の間、忠行が訪ねてきて父の訃報を告げてきた。鳥辺野において葬儀を行ったという。満月丸の母は彼が四歳の時に失踪し、そして今日、彼は父も失った。満月丸は忠行に「私を賀茂家の家人にしてくれませんか」と泣きつく。庶子である自分は屋敷にいても肩身が狭いだけだ。それならば、いっそ屋敷を出て賀茂家に仕えたい。自分なら必ず出世の役に立てるはずだと。しかし、忠行は子供の言う事を本気にせず、満月丸を屋敷に残して帰路に着いた。
忠行が帰宅すると、息子の保憲が出迎えた。保憲は忠行の背後にいる満月丸を気に留めた。その時、忠行は初めて満月丸に尾行されていたことに気づいて驚く。満月丸は保憲に身の上話をして、家人にしてほしいとうったえる。天涯孤独の満月丸を憐れんだ保憲は、忠行の反対を押し切り彼を家人として雇う。
その日の夜は満月だった。満月丸は夢の中で再び忘川の岸辺に横たわっていた。前回とは異なり、岸辺には冥界の獄卒らしき鬼が見張りをしていた。満月丸が辺りを散策していると、向こうから玉屑が近づいてきた。満月丸が動揺している間に、彼女は満月丸の体を通り抜けていった。どうやら、今の満月丸は透明人間に等しい状態で、周囲の者には存在が認識されていないようだ。
満月丸は玉屑を尾行し、冥府にたどり着く。玉屑は泰山府君に拝謁し、「魂の片割れを遊霊にしてしまったかもしれない」と報告する。泰山府君は「本当にお前の探し求めている魂の片割れなら、そう簡単に死なない」と彼女の考えを否定する。死籍によると、遊霊と化した死者はいなかった。玉屑は、満月丸は臨死体験をしただけで現世に生還できたのだと安堵した。
目が覚めた満月丸は、保憲に奇妙な夢を見たと相談する。この時、満月丸は初めて泰山府君が陰陽道の祖神だと知る。しかし、玉屑のことは陰陽道の書物には記されておらず、保憲や忠行でも存在を知らなかった。
承平八年(938)春、元服した満月丸は忠行から成人の証として“晴明”という名を賜る。晴明は保憲の弟子となり、陰陽寮に入り暦生となった。
造暦の作業を手伝っていた晴明は、硯の墨の揺れから地震を予知する。保憲を始め陰陽寮の者たちは揺れに気づかず、本気にしない。ところが、震動は徐々に大きくなり、未曾有の大地震となったのである。
七夕の日、満月丸は忠行の言いつけを守り物忌をしていた。日付が変わるまであと一刻というところで、彼は縁側に出て星空を眺めた。せっかくの七夕に二星の逢瀬を見ないのはもったいないと思ったのである。その時、一筋の流星がゆっくりと落ちていった。その星を見た瞬間、晴明は突然胸が苦しくなって倒れてしまう。
気がつくと、満月丸は屋敷ではなく川辺に横たわっていた。彼は眼前に広がる川を三途の川と思い込み、自らの死を悟って絶望する。
対岸では、一人の仙女が暇を潰していた。彼女は泰山府君の娘玉屑で、兄である炳霊帝君の帰りを待っているのだ。玉屑は川の向こうに人の気配を感じ、獄卒の制止も聞かず橋を渡る。
満月丸が辺りを散策していると、向こうから玉屑が近づいてきた。彼は玉屑にこう尋ねた。「あなたは私と同じ死者ですか。それとも、あの世の案内人ですか」。満月丸を死者だと思い込んだ玉屑は、簡単に自己紹介をした後で彼の手を引こうとする。満月丸は玉屑の手を振り払い、「まだ死にたくない」と言って逃げ出す。玉屑は満月丸に冥界の事情を説明する。命日のうちに対岸に着かなければ、忘川を漂う遊霊になってしまうと。この川の本来の名は忘川で、日本人が勝手に三途の川と呼んでいるだけだった。満月丸は観念して玉屑に身を委ね、彼女の手を握る。その時、彼は全身に電流が走ったような不思議な感覚になった。一方、玉屑は平然としており、満月丸と同じ感覚を抱いたようには見えなかった。
対岸に向かうまでの間、満月丸は転生後の人生に思いを馳せた。すると、玉屑から衝撃的な事実を打ち明けられる。これから満月丸は玉屑の魂の一部となり、永遠に彼女の中で生き続けるのだと。不気味な話だと感じた満月丸は玉屑の手を振り払い、引き返そうとする。
その時、日付の移り変わりを知らせる鐘が鳴り響いた。二人はまだ橋の上にいて、対岸にたどり着いていなかった。満月丸が動揺していると、彼の全身が淡い光に包まれていく。玉屑が満月丸の手を取ろうとしたところで、彼の姿は完全に消えてしまった。
目を覚ました満月丸は、屋敷の縁側に横たわっていた。彼は現世に生還したのだ。ほっとしたのも束の間、忠行が訪ねてきて父の訃報を告げてきた。鳥辺野において葬儀を行ったという。満月丸の母は彼が四歳の時に失踪し、そして今日、彼は父も失った。満月丸は忠行に「私を賀茂家の家人にしてくれませんか」と泣きつく。庶子である自分は屋敷にいても肩身が狭いだけだ。それならば、いっそ屋敷を出て賀茂家に仕えたい。自分なら必ず出世の役に立てるはずだと。しかし、忠行は子供の言う事を本気にせず、満月丸を屋敷に残して帰路に着いた。
忠行が帰宅すると、息子の保憲が出迎えた。保憲は忠行の背後にいる満月丸を気に留めた。その時、忠行は初めて満月丸に尾行されていたことに気づいて驚く。満月丸は保憲に身の上話をして、家人にしてほしいとうったえる。天涯孤独の満月丸を憐れんだ保憲は、忠行の反対を押し切り彼を家人として雇う。
その日の夜は満月だった。満月丸は夢の中で再び忘川の岸辺に横たわっていた。前回とは異なり、岸辺には冥界の獄卒らしき鬼が見張りをしていた。満月丸が辺りを散策していると、向こうから玉屑が近づいてきた。満月丸が動揺している間に、彼女は満月丸の体を通り抜けていった。どうやら、今の満月丸は透明人間に等しい状態で、周囲の者には存在が認識されていないようだ。
満月丸は玉屑を尾行し、冥府にたどり着く。玉屑は泰山府君に拝謁し、「魂の片割れを遊霊にしてしまったかもしれない」と報告する。泰山府君は「本当にお前の探し求めている魂の片割れなら、そう簡単に死なない」と彼女の考えを否定する。死籍によると、遊霊と化した死者はいなかった。玉屑は、満月丸は臨死体験をしただけで現世に生還できたのだと安堵した。
目が覚めた満月丸は、保憲に奇妙な夢を見たと相談する。この時、満月丸は初めて泰山府君が陰陽道の祖神だと知る。しかし、玉屑のことは陰陽道の書物には記されておらず、保憲や忠行でも存在を知らなかった。
承平八年(938)春、元服した満月丸は忠行から成人の証として“晴明”という名を賜る。晴明は保憲の弟子となり、陰陽寮に入り暦生となった。
造暦の作業を手伝っていた晴明は、硯の墨の揺れから地震を予知する。保憲を始め陰陽寮の者たちは揺れに気づかず、本気にしない。ところが、震動は徐々に大きくなり、未曾有の大地震となったのである。