本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで

プロローグ


「はぁ、今日も疲れた……」

私は碓水 栞(うすい しおり)、27歳。会社員。

仕事を終えて社員寮に帰って来て、夕飯の仕度より先にまずノートパソコンを開いた。
【栞の読書感想記録】というタイトルのブログが画面に現れる。

「あ、昨日アップした感想にコメントついてる」

内向的で地味な私の唯一の趣味、読書。それから、その読書感想をブログに綴ること。

「へぇー藍堂鷹司ってインタビューでそんなこと答えてたんだ。アズライトさん、本当に詳しいなぁ」

半年ほど前からコメントをくれるようになったアズライトさん。
年齢も性別もわからないけれど、私が一番好きな作家の藍堂鷹司(らんどう たかし)についてとても詳しく、コアな話ができるのが楽しい。藍堂鷹司は奇想天外なトリックの推理小説から、壮大な時代小説まで幅広く書く小説家だ。
登場人物も魅力的で、ドラマ化・映画化した作品も多いベストセラー作家。
年齢も素顔も公表していない謎の多い男性作家だけれど、デビューして17年のベテランなので、40歳以上だろうと言われている。
私がハマッたのはここ数年だから、昔のインタビュー記事なんかは知らないことが多く、アズライトさんは丁寧に教えてくれるのだ。
作品に対する作者の考えを知るのが好きなので、今はもう入手できない雑誌の記事について教えてもらえることはとてもありがたい。

私にとって、大好きな本について思う存分語り合えることは何よりも大事なことだ。

恋愛? 学生の頃、教室で本を読んでいたら男子達にバカにされた経験から、男性に苦手意識を持つようになってしまって、とんと縁がない。

私はずっとこうやってささやかな幸せを大事にしながら、静かに暮らしていくんだろうと信じて疑わなかった――
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神見灯里(かんみ あかり)、26歳 田舎の小さな会社で働く事務員。 社長の親族の新入社員に仕事のミスを着せられて落ち込む帰り道。 ふいに香った焼き菓子の甘い匂いにつられて辿り着いた場所はーー ※一話ではまだ出会っていませんが、 灯里と天才パティシエ美形男子との恋愛ストーリーになる予定です。

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