いじわる主治医は、私にだけ甘い
応接間のようなところに通されると、さとじいはお茶というより高級ホテルのアフタヌーンティーみたいなものを用意してくれた。

「こちらはホテルイッツカールトンの専属ショコラティエに特注で手配させていただきました。花野様のお口に合うとよろしいのですが」

「口に合うも何も、食べていいんですかコレ」

「食え食え。夕飯は慶人に作らせるが何か嫌いなものはないか」

「とんでもございません。何でも食べます!」

「遠慮せず言ってくれていいからね。僕は料理するのが好きなんだ」

「ありがとうございます。料理が好きなんてすごいです」

「俺はてんでだめだ」

「彩人、私も料理は超苦手なんだ。引いた?」

「全然。ていうか見た目通りだよ」

「だから誰かに文句言うことなんてありえません。ほんとにありがとうございます」

「じゃあ作ってくるから、彩人とゆっくりしてて」

慶人さんそう言うと、部屋を出て行った。

「ねえ、失礼なこと聞いていい?」

「なんだ?」

「慶人さん、穏やかで心広くてなんでも許してくれそうなあの感じ。彩人と真逆じゃん」

「ほんとに失礼だな。俺は傍若無人で不愛想で優しくもないってことかよ」

「いやそこまでは言ってないけどさ。院長先生の座を譲ったっていうから、もっとちょっと変わった人かと思ったの」

「なるほどね。あのな。あいつはこの世界の大体のことに興味がないそうだ」

「興味がない?」

「金とか名誉に執着がない。だから俺に譲ったんだ。俺には心ってやつがあるかららしい、あいつなりに俺を見込んでくれてるんだ。そして俺もあいつの自分にない部分を尊敬してる。例えばいつも冷静なところとか、さ」

「なるほど、わかるようなわからないような。だって何にも関心が持てないって寂しいことな気がして。料理が好きとは言ってたけど。もっと慶人さんにしかできない素晴らしいことはたくさんある気がする」

「なに? あいつの味方かよ? 好きになったか?」

「そんなわけないじゃん、もう」

ただ、今の慶人さんの在り方は少し気がかりだってだけなのにな。
ずっとこのままじゃ放っておけない、みたいな感じがした。
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