さよなら、未来を生きる君へ

それで、今から1週間前。

俺は2人の待ち合わせ場所になっているカフェにいた。

近くの席に座っては、緊張した面持ちで薪原のことを待つ紗凪を見守っていた。

約束の時間より少し早く現れたのは、黒縁メガネをかけている男性。

見るからにインテリ系で塾講師をしているという。

メールでは仲良くても実際に会うとなにを話せばいいのか分からず2人とも会話があまり弾んでいなかった。

ところが、注文した料理が運ばれた瞬間、紗凪の表情がみるみるうちに笑顔になった。

New Futureとコラボしたパンケーキだからだ。

ふわふわとしたパンケーキの上に生クリームがたっぷりのっていて、一際目がいくのが歌手になる夢を叶えた主人公が純白なドレスを身に纏いマイクを手に持って歌唱しているように見えるケーキピック。

まるで、雪の上で歌っているかのような仕上がりに、紗凪はスマホを向けてはパシャパシャと撮影会をし始めて、薪原が「一緒に撮ってあげるよ」と紗凪のスマホを借りるなりパンケーキと一緒に撮ってあげていた。

次第にアニメについて話が盛り上がり楽しく食事を済ませた帰り道、薪原は「結婚前提に付き合って欲しい」と告白した。

でも、紗凪はすぐに答えを出さなかった。

辛い出来事を思い出したのか俯いている。

紗凪の過去なんてなにも知らない薪原は気まずい沈黙がこれ以上続かないようにすぐに場を明るくした。

「返事はすぐじゃなくてもいい。俺は紗凪さんといて楽しかったし、できればまた会いたい」と言った。

それに対してすぐに「私も会いたいです」と言った紗凪だか、未だに返事を保留にしている。

なにをそんなに悩むのか。

あいつとまた会いたいと本当に思うのなら、それが答えだろ。

だから、俺にできることは1つしかない。
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