追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 旭は部屋に戻って1人でいると藍の事ばかり考えてしまうのだ。

「相当やばい」と心の声が出てくる。その言葉は現状を知れば知るほど、口が勝手に発するのだ。それも無意識のうちに。藍で心がいっぱいになるのだ。

何気なく扉を見ているとゆうが少し開けて、旭を見ていた。
びっくりして「わあーっ!」と声を上げてしまった。

「旭、入っていい?」
「なんだよ。びっくりするから、ノックぐらいしろよ」
「ノックしたけど、旭の返事がなかったから、開けてみた。入っていい?」
「いいよ。入って」
「じゃあ、お邪魔します」喜んでゆうは旭の部屋に入った。
「何か、用あるの」
「旭のファンだから、今度の作品が知りたくて、藍ちゃんが旭の作品を絶賛していたのが気になって」
「大袈裟に言ってるだけだ」
「でも目を輝かせて言うのよ」
「それは今までと違ったものを書くから、期待しすぎているんだ」
「どんなもの?」
「乱世の時代のもの。時代小説を書くからな」
「へえ、珍しい。旭の時代小説を読んでみたい」
「その時代のものは、書くのが辛い。あまり書きたくなかった」
「佐藤大先生でもそんなことあるの?」
「ある」
「じゃ、断ればいいじゃない」
「できない」
「何故よ。いつもの俺様系の旭なら簡単に断っていたでしょ」
「断れない。惚れた弱みだ」
「相当、惚れているのね」

旭は頷いた。この人を待っていたからだと照れながら白状した。ゆうが旭のことが好きだと知っている上で言うのだ。

旭は最初からゆうを認めていた。人によっては男が好きだと知ると冷たくなり、気持ち悪いと遠ざかる人もいるのだ。
旭はそれを知っても、普通に接してくれた。

それはゆうの個性で否定している奴らがおかしいと。そんなこと言われて好きにならない方がおかしい。

ゆうは旭に告白していた。「旭が好きだ」と、これで遠ざかっていくのなら、仕方がないと覚悟した。

でも旭は気持ち悪いと言わなかった。誠実に断ってくれた。生まれた時から心に決めている人がいる。それはまだ出会えていないそうだ。

前世の話をしていた。その意味か分からなかった。でも真正面から向き合ってくれて、誠実に答えてくれた。

断られたショックはあったが、旭のために、どんなことでも応援したかった。その後も旭は今まで通りに接してくれた。

「ゆうは、かけがえのない友だ」と、友達でも旭の近くにいられるだけで幸せだと思えたのだ。
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