恋色ノート

 それでも結局、何を考えてもわたしは名前を呼んでしまった。


 自分でもわからないくらい、体は勝手に動く。


 なんで?

 やっぱり場所が場所だから?


 わたしが素直になる唯一の場所。



「ん、よくできました」



 ふじさ……南央くんはそう言いながらわたしの頭をぽん、と撫でた。


 え、もうこの人絶対女慣れしてるよね、してるよね……?


 ていうかわたしがここでは先輩なんですけど……。



「そうだ。俺、学校ではあんま女子と喋りたくないから、誰にも言うなよ?」


「わかってる。わたしだってあんなに話しかけられたら喋りたくないもん。ていうか、わたしのことだって誰にも言わないでよ?」


「うん、わかってる」



 ほんとにわかってるのか、わかってないのか。


 まあでも別にわたしのことを言う人なんていないし、なんだかんだ約束は守ってくれる人だって感じるし。


 クールな王子さま、なんて言われてる南央くんでも普通に喋る人なんだなぁって。



「(……この人、ずるい)」



ちょっとだけ、わたしにきゅんって色をくれる人だ。







< 22 / 28 >

この作品をシェア

pagetop