恋色ノート
それでも結局、何を考えてもわたしは名前を呼んでしまった。
自分でもわからないくらい、体は勝手に動く。
なんで?
やっぱり場所が場所だから?
わたしが素直になる唯一の場所。
「ん、よくできました」
ふじさ……南央くんはそう言いながらわたしの頭をぽん、と撫でた。
え、もうこの人絶対女慣れしてるよね、してるよね……?
ていうかわたしがここでは先輩なんですけど……。
「そうだ。俺、学校ではあんま女子と喋りたくないから、誰にも言うなよ?」
「わかってる。わたしだってあんなに話しかけられたら喋りたくないもん。ていうか、わたしのことだって誰にも言わないでよ?」
「うん、わかってる」
ほんとにわかってるのか、わかってないのか。
まあでも別にわたしのことを言う人なんていないし、なんだかんだ約束は守ってくれる人だって感じるし。
クールな王子さま、なんて言われてる南央くんでも普通に喋る人なんだなぁって。
「(……この人、ずるい)」
ちょっとだけ、わたしにきゅんって色をくれる人だ。