こっちを向いて、ヴェルランド。
なんと無しに読み始めた推理小説にここまでハマるとは誰が予想しただろうか。

「おい」

リーリエが次から次へと小説を読み進めていると、不意にヴェルランドから声をかけられた。

「なんですか?」

リーリエはその言葉にようやく顔を上げる。

「雷なら随分と前に止んだ。そろそろ部屋へと戻れ」

ヴェルランドの言葉にリーリエは、ようやく雷が止んでいる事実に気がつく。

「す、すみません…。あんまりにも面白くって…」

リーリエは慌てて小説を本棚に閉じようとすると、ヴェルランドは右手でその動きを静止する。

「気に入ったなら数冊持っていくといい…。但し、読み終わったらここに戻してくれ」

「宜しいのですか?」

「あぁ。私はもう覚える程読んだからな…。気にせず持っていけ」

リーリエはヴェルランドの言葉に、小さく頷くと、言われた通り三冊ほど本棚から拝借する。

「えっと…、戻しにくる場合は、扉の前でお呼びすれば宜しいですか?」

「あぁ。そうしてくれ、私は基本的にこの部屋にいる。何かあれば呼んでくれ」

「…」

「…どうした?」

「い、いえ。何故そんな親切にして下さるのかと…」

不思議そうに小首を傾げるリーリエに、ヴェルランドは思わず視線を逸らす。

「…親切?、それは貴様の気のせいだ」

ヴェルランドはそう吐き捨てると、部屋の扉を開けて外へ出る様に促す。

「さあ、お引き取り願おう」

何か気の触ることでも言っただろうか?酷く険しい表情へと変わってしまったヴェルランドの様子にリーリエは寂しそうに俯くと、指示された通り部屋を後にした。

(彼は何か変だ)
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