こっちを向いて、ヴェルランド。
ⅩⅢ【過去の追憶】

「ヴェルランド、私は貴方と出掛けられて幸せです」

不意にそう告げられたヴェルランドは戸惑い気味にリリィの顔を見つめた。

「リリィ、冗談でもそう言った事を言うものでは無い…」

ヴェルランドの忠告にリリィはふんわりと微笑むと、ヴェルランドの腕に抱きつく。

「お、おい!」

「別に良いではありませんか?、それとも何か困る様な事があるのですか?」

リリィの言葉にヴェルランドは顔を顰める。

「お前はダンゼルの妻だろう…、少しは自分の体裁を気にしろ」

リリィのどうしてもと言う頼みに訪れた花祭り。あたりは沢山のカップルで賑わい、春の訪れを祝っていた。

「体裁なんて馬鹿馬鹿しい。それに私は思った事を言ったまででです」

リリィは不満気に頬を膨らます。

「ほう…では俺も言わせてもらおう。変な噂が立っては困る。長生きしたければ今後発言には気をつけるべきだな」

「あ、見て!あそこに綺麗な花のアーチがあります!」

リリィはヴェルランドの説教を聞いていないのか、おもむろに走り出す。

「おい!突然走るな!」

ヴェルランドは慌てて後を追うと案の定、リリィは花のアーチの前で転んでしまった。

「うー、、痛い…」

足を押さえて痛がるリリィにヴェルランドは手を差し伸べる。

「ここはなだらかな傾斜になっている…。突然走れば足を取られて当然だ。そんな事もわからなかったのか?」

ヴェルランドはリリィの服についた土埃を払ってやると、彼女の足をさすりながら再び説教をする。

「ヴェルランドったらお説教ばっかり。せっかく楽しみにしてたのに…」

「…」

「そんなに私と居るのはつまらないですか…?」

少し残念そうに呟くリリィの言葉にヴェルランドは小さく溜息を吐いた。

「リリィ…、お前との外出は俺も楽しい…。だが、やはり世間体という物がある。お前はダンゼルの妻で私はただの護衛だ…」

そう。ただの護衛ー。

それ以上でもそれ以下でも無い関係。

「…そうですか」

リリィは残念そうに瞳を伏せる。この時、ヴェルランドは彼女が抱えている痛みに気づいてやれなかった。

彼女が抱えた闇、彼女が抱えた孤独、その全てを理解するにはまだ若過ぎた。

「貴方も私を救ってはくれないのですね…」

「私は守る事は出来ても、救えはしない…」

「…そうですか」

「すまない…」

ヴェルランドはリリィへ静かに謝罪すると、動揺した心を悟られない様彼女へと背を向けた。



(あの時、もっと話を聞いていていればー。)

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