乙女ゲームの親友ポジに転生した天才チート系令嬢、ストーリーのそのあとの方が大変だった件

 アガレスに戻り、ディブレに南の町付近で目撃情報のあったスライム状の汚染魔物をアルカ着浄化してくれたこと。
 そしてアガレス周辺に残る魔王汚染の浄化までしてくれたことを報告した。

「なんと……! まさかそこまでしていただけるとは! 今代の聖者様には、いったい我らはどれほどのお礼を差し上げればよろしいのか」
「いえいえ。僕が勝手にやったことなので。というか、僕がレイスにいいところを見せたくてやったことなので。むしろ僕がレイスにかっこよく映ることがあるのなら積極的にやっていきたいと思っているので、教えてほしいくらいです!」
「ええ……? ああ……なるほど?」

 ディブレよ、納得しないでほしい。
 というか、アルカは基本的にストーリーを楽しむための主人公のはずなのだが?
 確かに『レイス・トゥワイエット』を人生のパートナーにすることはできる。
 アルカを主人公にした場合の、私が知る限りでは唯一の攻略対象と言える。
 だが、いずれ男の娘や女の子も実装予定だったはずだ。
 それになにより、アルカはこんなにグイグイくるタイプじゃなかった。
 なんなの? 急にキャラ変わりすぎなんだけど?

「それよりも、必要な物資の目録などはできましたか? 私の方でアーレシュア王国に申請しておきます」
「はい。こちらにまとめてあります。なにからなにまで……我々はなにも返すものがないというのに……」
「ディブレ様、そんな考え方はよくありませんわ。この国にはきっと、この国にしかない特別なものがあります。そうね……たとえば人間の国には魔力を含んだ家畜はいないのですし、それらを増やして加工して、魔力回復の効果を持つ食べ物を作って交易する、とか。そういうものを、今後模索していけばいいのです」

 まあね。
 私も他人に借りを作るのが嫌なタイプだから、ディブレの言ってることはわかる。
 もらうばっかりって、罪悪感持つよね。
 でも、魔族国って人間の国とはなにかが違う。
 きっとこの国だけの特別がある。
 今は立て直しに注力して、その中で私がこの国にしかないものを見つけてあげればいい。

「そう……そうでしたね。すみません」
「まあ、一国の王が口癖のように謝罪はよくありませんわ。今から直しておいてくださいませ」
「あ、ああ……そうですよね! すみま……い、いえ。ありがとうございます」

 そう。それでいい。
 でも――。

「一国の王が使者とはいえ気軽に礼を言うのも侮られます。ディブレ様には外交も覚えていただかなくてはいけませんね」
「む……難しいのですね……」
「そうですね。ですが今後魔族国を守っていくためにも、頑張ってくださいませ。魔王が倒されたばかりなのですから、次の百年までにアーレシュア王国の手を借りてしっかりと建て直さねばならないのです。わたくしも協力いたしますから、一つ一つ覚えてまいりましょう」
「は、はい!」

 なぜか直立するディブレ。
 緊張の面持ちに自分の表情筋が仕事放棄していることを思い出した。
 無表情の女に淡々と告げられたら緊張もしてしまうか。
 申し訳ないことをしてしまった。
 自分でもこういうところはよくない自覚が、ある。
 でも前世からの性格が祟っていて、改善しようにもどこから手をつけていいのかさっぱりわからない。
 アルカとルナーシャはなぜかすぐに慣れてくれたけれど、初対面の人や親しくない相手にはこうして怯えられるのよね。
 まさか族王ディブレにまでビビられるとは思わなかったけれど。

「ではこちらの目録をお預かりします。アーレシュア王国の方に申請をして、どのくらい通るか、どれが先に届くかは今の時点では確約できませんが」
「は、はい。それはもちろん。よろしくお願いします」
「……言葉遣いももっと偉そうに直した方がいいですわ。わたくしは使者とはいえディブレ様のように国を統べる者と対等ではありませんから」
「は、はい……いえ、ええと……この場合は――」
「『よろしく頼む』――という感じですね」
「よ、よろしく頼む」

 根っからの善人。
 他者に寄り添う人なのだろう。
 修正が無理そうなら、公の場だけでも態度を変えてもらう、演技をしてもらうしかないわね。
 ただ、この様子を見るに演技でも大変そう。
 しかし遜る態度なんて見せたら、アーレシュア王国の貴族だけでなく世界中から見下されて搾取対象にされかねない。
 魔族国を支配できるような人間は、王族でもそうそういないだろう。
 この、空気中にすら満ち満ちている自然魔力。
 アーカーとエルワーズの体調も見て一度ディニーラで魔力抜きしてもらう必要がある。
 私はまったく平気なんだけど。

「さて、報告も終わったしアーカーを回収してエルワーズのいる村に帰りましょうか」
「ナシュたちの畑が近くにある村、だね。名前はあるの?」
「どうなのかしら? マイキーとナシュに聞いてみましょう」

 別に名前を変える必要はないもの。
 というか、村や町を再興する度に名前を変えていたら地図の書き換えが大変すぎる。
 地元民も困惑よ。

「アーカー、お待たせ」
「おお、無事だったか。アルカ、間に合ったんだな」
「うん。ありがとう、アーカー」

 もしもアガレスに来たら、私が南の町に行ったと伝えて、言伝を残しておいた。
 アーカーはそれをきちんと果たしてくれたのだ。

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