わたし、まだ話してる。
彼はニュースが好きだった。

というより、ニュースに反応するのが好きだった。

夜、彼の家でご飯を食べながらテレビを見ていると、だいたい何かが始まる。

政治。
税金。
若者。
会社。
住んでいる地域。

「ほんと終わってるよな、この街」

ビールを飲みながら、彼は言う。

「上のやつら何もわかってないし」

彼はちゃんと選挙にも行く人だった。

だから私は最初、
“社会に興味を持ってる人”
なんだと思っていた。

でも、話を聞いているうちに、少しずつ違和感が増えていった。

彼は、深掘りを嫌う。

文句は言う。
でも考え続けない。

「でも、こういう見方もあるんじゃない?」

私がそう言うと、彼はすぐに口を開く。

「違う違う違う!」

その勢いに、私は毎回少しだけ押される。

彼の中ではたぶん、
“意見“
なのだと思う。
< 11 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop