わたし、まだ話してる。
その日、彼は珍しく少し酔っていた。

店を出たあと、冬の風が冷たかった。

「寒っ」

そう言いながら笑う横顔を見て、私は少し安心していた。

その日は、なぜかいつもより距離が近かった。

歩く速度も。
触れる肩も。
沈黙も。

ホテル街の近くを通った時、彼が立ち止まった。

そして少し困ったように笑って、

「……もうちょっと一緒にいてもいい?」
と言った。

私は、その言い方に弱かった。

軽い誘い文句みたいじゃなく、
本当にそう思っているように聞こえたから。

私は小さく頷いた。
< 7 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop