トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
「……紗凪?」

震える声が、すぐ近くで聞こえる。

私はその声を追いかけるみたいに、ゆっくり意識を浮かべた。

重い。

とにかく身体が重い。

息もしづらい。

胸が痛い。

でも指先に触れる温もりだけは、はっきり分かった。

離したくない。

そう思った。

「……っ」

何とか目を開けようとする。

でも瞼が鉛みたいに重い。

薄暗い光が滲む。

白い天井。

機械音。

規則的なモニター音。

——病院。

ぼんやり理解した瞬間。

「紗凪!」

声が近づく。

私はゆっくり視線を動かした。

そこにいたのは。

目を真っ赤にした陽貴くんだった。

髪も少し乱れていて。

頬もやつれていて。

ひどい顔。

きっと全然寝てない。

私はぼんやり思う。

……なんでそんな顔してるの。

泣きそうな顔。

今にも壊れそうな顔。

そんな顔、してほしくない。

私は少しだけ指を動かす。

すると陽貴くんが、ぎゅっと手を握り返した。

「……よかった」

掠れた声。

「ほんとに……よかった……」

その声を聞いた瞬間。

胸の奥がじんわり熱くなる。

あぁ。私。

ちゃんと戻ってこれたんだ。

そう思った。

でも。まだうまく声が出ない。

喉が痛い。

息も苦しい。

それでも何か伝えたくて、私はゆっくり唇を動かす。

でも挿管されていて声が出ない。

陽貴くんはすぐ目を見開いた。

「ここいるから」

泣きそうに笑う。

私はその顔を見ながら、少しだけ安心する。

よかった。

ちゃんといる。

置いていかれてない。

すると。

視界の端で、お母さんがそっと涙を拭いていた。

梓も、泣きそうな顔で笑ってる。

みんな。

そんな顔しないでよ。

そう思うのに。

今はもう、眠気の方が強かった。

意識がまた沈みそうになる。

でもその前に。

私は最後の力で、もう一度だけ陽貴くんの手を握った。

すると。

陽貴くんが、すぐ額を私の手へ押し当てる。

「……ありがとう」

震える声。

「戻ってきてくれて」

その声を聞きながら。

私は安心したみたいに、またゆっくり眠りへ落ちていった。
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