トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
紗凪ちゃんが眠ったあと。

病室の中には、また静かな時間が戻ってた。

規則的なモニター音。

酸素の流れる音。

点滴ポンプの電子音。

その全部が、“ちゃんと生きてる”って教えてくれてるみたいで。

俺は椅子に座ったまま、小さく息を吐いた。

ほんまに。

よかった。

そう思った時。

病室の扉が、そっと開く。

振り返ると、梓ちゃんやった。

俺と目が合った瞬間。

「寝たよ」

そうジェスチャーすると。

梓ちゃんは小さく頷いて、“ありがとうございます”って頭を下げるみたいに笑った。

その顔見て、ふと思う。

……この子も、相当限界のはずや。

紗凪ちゃんが搬送されてきてから、毎日病院来てる。

しかも、ただ付き添ってるだけちゃう。

状態説明聞いて。

家族へ連絡して。

彼氏くんとも連携取って。

師長とも話して。

多分、東京の病院ともやり取りしてる。

中継役全部やってるみたいなもんや。

それやのに一回も“しんどい”顔せぇへん。

今朝、紗凪ちゃんのお父さんとお母さんが海外戻らなあかんってなった時も。

『紗凪のことは私に任せて行ってください』

って、真っ先に言うてた。

あの時のお父さんとお母さん、ほんまギリギリまで悩んでたらしい。

そらそうや。

娘がこんな状態で、離れたい親なんかおらへん。

でも向こうでかなり大きいトラブルあったみたいで。

結局、泣く泣く戻って行った。

その時も梓ちゃん、一回も不安そうな顔せぇへんかった。

“任せてください”

って、ちゃんと言い切ってた。

実際。

ほんまに毎日ちゃんと看病してる。

紗凪ちゃんが少し目開けたらすぐ気づいて。

痛そうなら先生呼んで。

水分欲しそうならすぐ準備して。

不安そうな時はずっと手握って。

ERのナースや言うてたけど。

多分この子、相当仕事できる。

動き見てたら分かる。

視野広いし、判断早いし、何より人の変化に気づくんが早い。

ほんでこんな状況でも周り気遣える。

普通にすごい。

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