トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
——“一番しんどかったの、梓ちゃんだと思う”

その言葉が、ずっと頭の中で響いていた。

私は何か返そうとした。

でも。

上手く声が出ない。

胸の奥が、じわじわ熱くなっていく。

優朔さんは、急かさず静かに待っていた。

その優しさが、逆に駄目だった。

気づけば。

ぽろっと涙が落ちる。

「あ……」

自分でも驚いた。

泣くつもりなんてなかったのに。

でも、一回溢れたらもう止まらなかった。

視界が滲む。

私は慌てて顔を逸らす。

「……ご、ごめんなさい」

「なんで謝るの」

優朔さんの声は、すごく穏やかだった。

私は唇を噛む。

ずっと。

ずっと気を張ってた。

紗凪が死ぬかもしれないって言われた日から。

私がちゃんとしなきゃって。

私まで崩れたら駄目だって。

ご両親の代わりに。

親友として。

全部、ちゃんとしなきゃって。

だから。

怖いとか。

しんどいとか。

考えないようにしてた。

でも今。

“頑張ったね”って言われて。

“しんどかったね”って言われて。

初めて。

あぁ、私限界だったんだって気づいてしまった。

涙が止まらない。

「……っ、わたし……」

声が震える。

「ほんと、怖くて……」

掠れた声が漏れる。

「あの日……ほんとに、紗凪……死ぬかもって……」

そこまで言った瞬間。

涙が一気に溢れた。

私は顔を覆う。

そんな私を見て。

優朔さんが、ゆっくり立ち上がった。

そして。

ふわっと、優しく抱きしめてくれる。

「……っ」

驚いて息が止まりそうになる。

でも。

拒絶するより先に、安心が来た。

優朔さんの身体から、ふわりとシトラスの香りがする。

爽やかで。

でもどこか落ち着く匂い。

背中をゆっくり撫でられる。

「もう大丈夫」

低くて優しい声。

その声が、張り詰めてたものを全部壊していく。

私は子供みたいに泣いてしまった。

優朔さんは何も言わない。

ただ静かに抱きしめてくれていた。

「……ほんと、よく頑張った」

耳元で落ちる声。

その瞬間。

“誰かに頼ってよかったんだ”

って、初めて思えた。

私は震える手で、優朔さんの服を少し掴む。

すると優朔さんが、また優しく背中を撫でる。

「今くらい、甘えていいから」

その言葉に。

私はまた、涙を零した。
< 187 / 242 >

この作品をシェア

pagetop