トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
それから、2日。

私はHCUを出て、一般病棟へ移ることができた。

「順調ですね」

担当医の先生がカルテを見ながら笑う。

「リハビリもかなり進んでるし、このままいけば退院も見えてきます」

その言葉に、胸が少し熱くなった。

退院。

やっと、そこまで来た。

事故直後。

ICUで眠っていた頃には、想像も出来なかった未来。

私は小さく息を吐く。

「……もうひと頑張り、ですね」

先生が頷く。

「そういうことです」

「無理だけはしないでくださいね」

先生が病室を出ていく。

静かになった部屋。

一般病棟は、ICUやHCUと違って少し空気が穏やかだった。

モニター音も少ない。

人の声も遠い。

窓から差し込む昼の光が、やけに柔らかい。

私はベッドへ背中を預けた。

……退院か。

ちゃんと嬉しい。

早く病院を出たい。

早く普通の生活へ戻りたい。

早くみんなのところへ帰りたい。

そう思うのに。

ふと。

頭へ浮かんだ。

私は瞬きをする。

……あれ。

そういえば。

森崎さんこの2日間、来てない。

その事実に気づいた瞬間。

胸が、少しだけざわついた。

今までは毎日来ていた。

昼休憩。

仕事終わり。

オフの日ですら顔を出して。

「今日リハどうやった?」

とか。

「ちゃんとご飯食べた?」

とか。

当たり前みたいに隣にいた。

なのに。

陽貴くんたちが来てからぴたりと来なくなった。

私は小さく俯く。

……忙しいだけ?

フライト?

ER?

主任だし、そもそも暇な人じゃない。

そう。

ちゃんと分かってる。

分かってるのに。

胸の奥が、少しだけ寂しかった。

私は自分でその感情に戸惑う。

「……なんで」

小さく呟く。

陽貴くんが来てくれた。

ちゃんと気持ちも確認できた。

ちゃんと、お断りしなきゃって思ったのに。、

私はぼんやり窓の外を見る。

夕方の空。

あの日、屋上で見た空を思い出す。

——“俺にしやん?”

胸が、また少しざわついた。

その時。

コンコン。

病室の扉がノックされる。

私は反射的に顔を上げた。

一瞬。

期待してしまった自分に、びっくりする。

「……はい」

返事をすると。

扉がゆっくり開いた。
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