トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
「ていうかさ」

蒼依くんが急に真面目な顔になる。

「紗凪さん大阪行っちゃったら、梓さん絶対寂しいじゃん」

「あー……」

私は思わず梓を見る。

すると梓が少し肩を竦めた。

「まぁ、寂しいよ普通に。親友だもん」

その一言が、思ってた以上に胸へ刺さった。

最近ずっと忙しくて、ゆっくり話す時間も減っていた。

でも学生の頃からずっと一緒で。

看護師になってからも支え合ってきて。

家族みたいな存在で。

そんな梓と半年離れる。

改めて実感すると、やっぱり少し苦しい。

「……紗凪?」

梓が不思議そうに私を見る。

気づけば私は、少し泣きそうな顔をしていたらしい。

「っ、違……」

慌てて誤魔化そうとすると。

隣から、ふわっと肩を抱き寄せられた。

「はいはい、うちの紗凪泣かせないでね」

陽貴くんの優しい声。

そのまま頭をぽんぽんされる。

「……泣いてないよ」

「うんうん」

完全に子ども扱い。

でも、その優しさがありがたかった。

すると梓が少し笑いながら言った。

「大丈夫だって」

「半年でしょ?」

「今の時代、電話もできるし会いにも行けるし」

「……うん」

「それに」

梓がちらっと陽貴くんを見る。

「この人絶対すぐ大阪行くじゃん。
私もついていく」

その瞬間。

みんなが一斉に陽貴くんを見た。

数秒の沈黙。

そして。

「……行くけど?」

真顔。

「はやっ!」

蒼依くんが爆笑する。

「絶対言うと思った!」

「だって無理だろ半年会えないの」

「1日も無理なんじゃ…?」

奏くんが冷静に返す。

すると陽貴くんが私を抱き寄せたまま、小さく息を吐いた。

「もう既に寂しい」

「まだ行ってないよ?」

「分かってるけど寂しい」

その声が本気すぎて、思わず笑ってしまう。

すると陽貴くんが少し拗ねたみたいに私を見る。

「笑った」

「だって……」

「紗凪は余裕そう」

「そんなことないよ」

私は小さく首を振った。

「私も寂しい」

そう言った瞬間。

陽貴くんの目が少しだけ優しく細められる。

そのまま自然に指を絡められた。

「……ほんとかな」

「なにそれ」

「俺ばっかり寂しいの嫌だから」

即答。

その場にまた笑いが起きる。

すると。

「はいはいごちそうさまでーす」

蒼依くんが大袈裟に両手を合わせた。

「でもほんと、二人見てると恋愛っていいなって思うよね」

と、奏くん。

「珍しいこと言うね」

優朔さんが呟く。

「え、俺だって恋愛したいですよ?
でもすぐ飽きるじゃないですか」

奏くんの冷静な一撃。

「奏くん辛辣!」

そんな会話を聞きながら、私は自然と笑っていた。

気づけば時間はかなり遅くなっていて。

テーブルの上には食べ終わったお皿が並び、部屋の空気もすっかり落ち着いている。

梓はソファにもたれながら笑っていて。

優朔さんはそんな梓へ、さりげなくブランケットを掛けていた。

その動作があまりにも自然で私は思わず、ふっと笑ってしまう。


その隣で少し照れたみたいに笑ってる梓を見て、なんだかすごく嬉しくなった。

それぞれ形は違うけど。

みんな、大切な人を想ってる。

その空間が温かくて。

私は胸の奥がじんわり満たされていくのを感じていた。
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