トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
みんなとの時間は、あっという間だった。

笑って。

泣きそうになって。

また笑って。

そんな温かい空気のまま、少しずつ解散の流れになっていく。

「じゃあまた連絡します!」

「大阪でも頑張ってください!」

後輩たちが口々に声をかけてくれる。

私は何度も「ありがとう」を返しながら頭を下げた。

気づけばカンファレンスルームには、私と梓だけが残っていた。

さっきまで賑やかだった部屋が、一気に静かになる。

梓は片付けながら、小さく息を吐いた。

「……ほんと行くんだね」

ぽつりと落ちた声。

その一言だけで、胸が少し苦しくなる。

「うん」

「実感わかない」

「私も」

そう答えると、梓がふっと笑った。

「でも紗凪、最近ちょっと顔変わった」

「え?」

「前よりちゃんと前向いてる顔してる」

その言葉に、私は少し目を瞬く。

梓は紙コップをまとめながら続けた。

「最初に大阪の話聞いた時、ほんと不安そうだったから」

「……まぁ」

「今も不安はあるんだろうけど」

「でもちゃんと“行きたい”って顔してる」

図星だった。

怖い気持ちは、まだある。

でも。

それ以上に、頑張りたいって思ってる自分もいる。

私は小さく笑った。

「みんなが背中押してくれたからかな」

「陽貴さんとか?」

「うん。梓やICUのメンバーも。」

そう答えると、梓が呆れたみたいに笑う。

「ほんとあの人、紗凪のこと大好きだよね」

「……うん」

否定できない。

すると梓が急に真顔になる。

「でもさ」

「紗凪」

「ん?」

「ちゃんと頼りなよ」

その声は、いつもより少し優しかった。

「紗凪って、平気そうな顔して一人で抱え込むから」

「……」

「向こう行ったらもっとそうなると思う」

返す言葉がなかった。

図星だから。

すると梓が軽く私の額を小突く。

「無理しすぎたら飛んでくからね」

「大阪まで?」

「行く行く」

即答だった。

思わず笑ってしまう。

「あと」

梓が少しだけ目を逸らす。

「寂しくなったら普通に電話してきていいから」

その言葉に、胸がじわっと熱くなる。

私は昔から、梓にたくさん助けられてきた。

看護学生の頃も。

新人時代も。

辛かった時も。

ずっと隣にいてくれた。

だから半年離れるのは、やっぱり寂しい。

「……梓」

「なに」

「ありがとう」

そう言った瞬間。

梓が少しだけ眉を寄せた。

「なにその最終回みたいなの」

「だって」

「半年後普通に帰ってくるでしょ」

その言い方が、あまりにも梓らしくて。

私は思わず吹き出した。

「……うん」

「ちゃんと帰ってくる」

そう答えると。

梓が満足そうに笑った。

「よし」
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