トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
「あともう一個」

森崎さんが、パンッと軽く手を叩く。

するとまた周りの視線が集まった。

森崎さんは私の方をちらっと見てから、少し誇らしそうに笑う。

「一ノ瀬さん、ただの応援スタッフちゃいます」

「今回のフライトナース育成支援プロジェクトで、俺と一緒に指導者側入ってもらいます」

その瞬間。

また空気がざわついた。

「指導者!?この若さで?!」

「マジで!?」

「やばいやん」

「そら森崎主任が直々迎え行くわけや……」

驚いた声が次々上がる。

私は少しだけ緊張しながら、その反応を見ていた。

すると森崎さんが、どこか楽しそうに続ける。

「若手フライトナースと一緒に現場出てもらいます」

「ヘリ乗って、実際の救急現場教える側です」

「まぁ簡単に言うと」

そこで一回区切る。

そして。

「未来のフライトナース育てる側っちゅうことです」

その言葉に、胸がどくんと鳴った。

改めて実感する。

私はもう、“教わるだけ”じゃない。

教える側になる。

責任も大きい。

でも同時に。

その言葉は、少し誇らしくもあった。

すると一人の男性看護師が目を輝かせる。

「え、めっちゃすごい人来てるやん」

「絶対勉強なるやつや」

「しかもフライト経験豊富なんやろ?」

「シンプルに憧れるわ」

そんな声まで聞こえてきて、私は少し困ったように笑ってしまう。

すると森崎さんが横でニヤッと笑った。

「せやからお前ら」

「しっかり食らいついてくださいね」

「この人、現場ほんま強いんで」

その言葉に、周りがさらに盛り上がる。

「うわプレッシャー!」

「でも楽しみ!」

「主任、俺もフライト乗りたいっす!」

「まずICU仕事覚えてから言え」

即座にツッコまれて、また笑いが起きる。

その空気が、すごく温かかった。

ギスギスしてない。

ちゃんと支え合ってる空気がある。

私はそんな光景を見ながら、小さく息を吐く。

森崎さんが、周りには聞こえないぐらい小さい声で言った。

「……大丈夫そうやろ?」

その声に、私は少しだけ目を見開く。

不安なのを、気づいてくれてたんだ。

私は小さく笑った。

「……はい」

すると森崎さんが満足そうに頷く。

「よかった」

その笑顔を見た瞬間。

少しだけ肩の力が抜けた気がした。

ここでなら。

ちゃんと頑張れるかもしれない。

私はそう思いながら、改めてこの新しい現場を見渡した。
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