トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
それから私たちは、他愛のない話を少しだけ続けた。

今日の撮影現場の話。

大阪のスーパーの話。

「ちゃんとご飯食べるんだよ」とか。

「陽貴くんこそ寝不足だめだからね」とか。

そんな、恋人同士のなんでもない会話。

でも今の私には、それがたまらなく安心できた。

『紗凪』

「ん?」

『今日ほんとによく頑張ったね』

その言葉に、胸がじんわり熱くなる。

「……うん」

優しい声。

甘やかすみたいな言い方。

離れてるのに、不思議と隣にいるみたいだった。

「……会いたいな」

気づけば、そんな言葉が零れていた。

電話の向こうが少し静かになる。

そして。

『俺も』

そのたった一言だけで、泣きそうになる。

でも寂しいだけじゃなかった。

ちゃんと支えてくれてる。

離れてても、想ってくれてる。

それが分かるから、頑張れる。

『また明日電話しよ』

「うん」

『おやすみ、紗凪』

「おやすみ、陽貴くん」

通話が切れる。

静かになった部屋。

でも不思議と、一人じゃない気がした。

私はバッグをソファへ置くと、そのままベッドへ倒れ込む。

今日一日を思い返す。

大阪中央医療センター。

新しいICU。

スタッフたち。

急変対応。

たくさんの刺激。

たくさんの緊張。

でも同時に。

“ここで頑張りたい”

そう思えた一日だった。

「……頑張ろう」

誰もいない部屋で、そっと呟いた。

そのまま目を閉じる。

疲れていたのか、意識はすぐに沈んでいった。

大阪で迎える、最初の夜。

私は深い眠りへ落ちていった。
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