トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
夜の駐車場。

人がいないことを確認してから、ぐっと距離を縮めた。

「……会いたかった」

耳元でそう言うと、紗凪の肩がぴくっと揺れる。

かわいい。

ほんと毎回反応が素直。

「っ、近い」

「何。嫌?」

「嫌じゃないけど……」

その返事聞けた時点で勝ち。

思わず笑ってしまう。

「はい、今日はお持ち帰りしまーす」

そのまま抱きしめる。

細い身体。

でもこの腕で、毎日命を救ってる。

そう思うと、誇らしくて。

同時に心配にもなる。

「……もうっ」

「紗凪ちゃんの負けでーす」

そう言うと、紗凪が悔しそうな顔をする。

その顔すら可愛いから困る。

車に乗り込んで、紗凪を見る。

疲れてる。

たぶんかなり無理してる。

「今日ちゃんとご飯食べた?」

って聞いたら、

「……ゼリー」

終わってる。

「それ食べたって言わないから」

呆れながらシートベルトを引き寄せる。

近づいた瞬間、病院特有の消毒液の匂いがした。

あぁ、今日も命の現場にいたんだなって実感する。


一ノ瀬紗凪。

東京中央大学病院ICU所属。

ドクターヘリへ搭乗するフライトナース。

若手ながら圧倒的な技術力と判断力を持ち、医師たちからの信頼も厚い存在。

どれだけ切迫した状況でも取り乱さない。

どれだけ壮絶な現場でも、最後まで患者へ寄り添い続ける。

冷静で。強くて。責任感があって。

患者のためなら、自分を後回しにしてしまう人。

その姿に救われてる人は、きっとたくさんいる。

院内でも有名な美人看護師。

整った顔立ちに、凛とした空気感。

でも本人は、自分が注目されることなんてまるで興味がない。

むしろ不器用なくらい真っ直ぐで。

好きなことには全力で。

頑張りすぎるくらい頑張ってしまう。

そして。

俺の前だと、驚くほど素直になる。

照れるとすぐ顔が赤くなるし。

ちょっと意地悪するとすぐ反応するし。

甘やかされるのにも弱い。

普段とのギャップが反則級に可愛い。

世間は俺を“トップアイドル”って言う。

何万人の前に立って。

歓声を浴びて。

キラキラした世界に生きてるって。

でもそんな俺が、本当に欲しかったものは案外単純だった。

「おかえり」

って言ってくれる場所。

素の自分でいられる時間。

何も背負わなくていい瞬間。

それを全部くれたのが紗凪だった。
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