トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
最初に立ち上がったのは、短めの髪をまとめた女性だった。

少し緊張しているのか、背筋がかなり伸びている。

「えっと…福岡市立救命センターから来ました、宮原美月です」

「救命歴は5年目です」

「フライトはまだ見学レベルしか経験なくて……」

そこまで言って、小さく息を吸う。

「でも、絶対に一人前のフライトナースになりたいです」

真っ直ぐな目。

その言葉に、神波さんがふっと笑った。

「いい目してるね」

宮原さんが少し照れたように頭を下げる。

続いて立ち上がったのは、体格のいい男性。

「愛知医科大学病院救命センターの真壁亮介です」

「救命7年目です」

かなり落ち着いた声。

でも少しだけ緊張しているのが分かる。

「元々ドクターヘリに憧れてて」

「今回選ばれた時、正直めちゃくちゃ嬉しかったです」

すると森崎さんが笑う。

「その気持ちめっちゃ大事です」

「憧れある人は伸びるからね」

真壁さんが少し安心したように笑った。

その後も、一人ずつ自己紹介が続いていく。

大阪の若手救命ナース。

東北の災害医療経験者。

離島医療を経験してきた男性。

それぞれ経歴も現場も全然違う。

でも共通していたのは——

全員、本気だということ。

最後に立ち上がったのは、少し小柄な男性だった。

「長野県立総合医療センターの朝比奈悠人です」

声は少し小さい。

でも目は真っ直ぐ前を見ていた。

「正直、自分がここにいていいのか今でも分かりません」

その言葉に、空気が少し静かになる。

朝比奈さんは拳を握りながら続けた。

「でも」

「現場で救えなかった患者さんがいて」

「……あの時、自分にもっと力があったらって思ったんです」

静かな声だった。

でも、その場にいた全員へちゃんと届いた。

「だから変わりたくて、来ました」

その瞬間。

森崎さんが、小さく笑った。

「それで十分やん」

朝比奈さんが顔を上げる。

「救いたいって気持ち持ってる人間は、ちゃんと強くなれます」

その言葉は、すごく自然だった。

でも。

現場を知ってる人間にしか言えない重みがあった。

すると神波さんが、ぱんっと軽く手を叩く。

「いやぁ、いいメンバーが揃いましたね」

「鍛え甲斐がありそう」

斉賀さんも静かに頷く。

「粒揃いですね」

その言葉に、育成メンバーたちの緊張が少し和らぐ。

そして森崎さんが立ち上がった。

「ほな、今日からの流れ説明します」

一気に空気が締まる。

さっきまで柔らかかった雰囲気が、少しずつ“現場”へ切り替わっていく。

「この半年」

「皆さんにはICU勤務と並行して、フライト実習入ってもらいます」

「当然、見学だけやないです」

「実際に現場出てもらいます」

育成ナースたちの表情が変わる。

緊張。

覚悟。

色んな感情が混ざっている。

森崎さんは続ける。

「ドクターヘリって、綺麗な現場ばっかちゃいます」

「血も見る」

「叫び声も聞く」

「助からへん命もある」

会議室が静まり返る。

「でも」

「それでも前向かなあかん」

「次の患者待ってるんで」

その言葉は重かった。

でも、誰も目を逸らさない。

森崎さんが全員を見渡す。

「ここでは“知識あるだけ”じゃ無理です」

「動けるか」

「考えられるか」

「仲間守れるか」

「患者救えるか」

「全部見ます」

空気が張り詰める。

すると突然。

森崎さんがふっと笑った。

「まぁでも」

「最初から出来る人なんかおらんので」

「失敗はしてええです」

「その代わり、次同じ失敗せんこと」

その言葉に、少しだけみんなの肩の力が抜ける。

そして。

森崎さんが私たち指導者側を見る。

「半年後」

「このメンバー全員、“本物のフライトナース”にしましょか」

その瞬間。

不思議なくらい自然に。

「はい」

私たち3人の声が重なった。
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