婚約者が病弱の幼馴染を優先しますが、一切構いません、最高です!
「すまない!今日のお茶会も、ユリアの体調が悪いから中止させてもらいたい!」


 こう言うなり消えていくのは、私の婚約者であるチャールズ。


 ……最初は流石にムッと来た。


 もちろん私も畜生では無いから、人が苦しんでいるのに、私との関わりを優先しろとは言わない。そこまで外道では無い。


 が、だからいいだろ当然だろ?そういう態度が明らかに見え隠れしているので、舐めてるのかクソカスが!


 私が思っていたことである。


 しかーーーーーーーーーーーーーーし!

 今やむしろ感謝しかしなくなった、ありがとう、ユリアさん!



 私は放置されたことで、仕方ないのである日図書館に向かった時に、あれほど嫌いだった学校の授業の歴史の分かりやすい本を偶然見つけた。


 もうやることねぇから、何と無しに開いて読んだら……




 あああああこの国の建国の初代陛下の雄々しい業績が書かれていて、私はドはまりした。


 何て偉大なのだろう、何て素晴らしいのだろう、何て私は今まで狭い世界に生きていたのだろう!


 そういう雄大な気持ちになれたのである!



 そう思うと、チャールズ?はっクソだね!どうでもいいね!


 こう言う気持ちしか湧かなくなった。


 私も現世に生きている人間ですから、政略結婚は受け入れないといけない。


 家のためにね。しかもチャールズの家は伯爵家、私の家は子爵家だけに、お父様お母様も、当然この婚約は成立させたいと思っている。



 でもさぁ、もうチャールズと上手くやっていきたいって気持ちも冷めきっている。

 だってセコイ男だなってのが、歴史の偉大なる英雄たち、またはそんな英雄のそばにいた、女傑達の振る舞い!


 そう言うのを知れば知るほど、何でこんなセコイことに付き合わないといけないのか!


 元がしょぼい私でも思うようになったのである。


 つまりチャールズがユリアさんを優先するということは、あのセコイボケと関わらなくていいってことだ。なんなら白い結婚になって欲しいね。


 そしてもしも決定的浮気の証拠でも見つかれば、婚約破棄を堂々と言えて、子爵家の不名誉とならずに、何なら慰謝料も取り上げることができるだろう!


 ってことで私はユリアさんの体調が悪くなれと祈るまではしないが(悪くなるほど看病するだろうから)もっとチャールズに依存して引き留めてくれと、日々祈るようになったのである!



 だから断られるたびに「ああ、歴史のお勉強をして、私は素敵な世界に飛びたてるのね」と最近は喜びしかないのである。


 しかしだ、これが裏目に出てしまった!


 チャールズのボケカスの奴、最近はあまりにも私が無関心なのにムカついたのかどうかは知らないが、



「……君は最近冷たくないか?」などと寝言を言ってくる。


 あのさぁ、私がむしろ冷たいおかげで、お前はユリアさんの看病ごっこができるんだろうが!そもそも看病ってだけなら、ユリアさんだって伯爵家なのだから、侍女とかがしてくれるだろうが、お前の自己満なんだよばーか!としか思わない(笑)


「別に冷たくありませんわ?私はユリアさんを看病する優しいチャールズ様が素敵と思っていますのよ」



 まったく思っていないがこんな戯言を言っておけばいいだろ、これくらい見下しているのだが、私の見下しの姿勢が流石に露骨過ぎたのか、




「寂しいではないか、我々は夫婦になるのだろう?」などと戯言を言ってくる。



 はぁ?こいつ頭おかしいの?



 多分ユリアさんは病弱だから結婚できないんだろうけど、本当はしたいのはユリアさんだろ?

 ならそっち行ってろよ、私の英雄達との旅立ちの日々の邪魔をするなっつうの!



 お前みたいなセコイものを無視して生きる、これを教えてくれた歴史に感謝をしている今が、人生で一番楽しいんだからな!




「君は僕がユリアの元ばかりに行くのに不満は無いのか?」



 何こいつはいきなり言いだしたのか、最初はありましたけど、今はどうでもいいんですが、むしろ行って欲しいのですが、私はお前と話す時間が苦痛でしかないんですが!


 しかし流石にそれを言うのはなと思って黙っていると……



「そうだよな、僕がユリアばかり見るのをきっと、怒っているんだよな、悪いことをしたよ」



 などとほざいている、これさぁ心から反省をしているみたいな風ならば、まだ許せた。だがこいつは、こんな反省ができる僕は素晴らしいって解釈しているのが駄々洩れだから、死ねとしか思わない。本気で人をイラつかせる天才だと思う。


 しかしだ、ここで私が嫌味を言ったらこいつは100%、ユリアさんに嫉妬をしている私みたいな脳内解釈をして満足するに違いない。


 ざけんなボケ!

 ってことで私は無視することにした。


 すると、「ああやはり僕は君を不幸にしていたのだね、安心して欲しい、僕はユリアの面倒も見るし、君も幸せにして見せる!」



 流石に私は切れた。



「片手間で私は幸せにならないので、どうぞユリアさんの元へとお急ぎください!」



 恐ろしく冷たい声で言ったつもりだが、



「ごめん!君に嫉妬させてしまった僕が悪い!」



 私は人生で初めて衝動的にグーパンチをこいつの顔面に叩き込みたい気持ちになるのを、ギリギリ抑えた……!


 ざけんなカスが!

 何が嫉妬だ!てめーが上からになってることが一番気に食わねーんだ!

 お前が私よりも上な点は、実家が伯爵家であること以外何1つねーんだ!

 弁えろ下っ端が!


 ああ、歴史を学んだせいで、私もいい意味でタフで態度でかくなったと思ったものである。


 だって英雄様って、無礼者にたいして容赦のない姿勢が素敵だから……!



 私が無視をしていると……



「君は僕が反省を示したというのに、どうしてそんなに態度がデカいんだね!」


 などと逆切れしてくる。はい反省した振り確定でした!

 本当に悪いと思っているのなら、もっと下手に出られるでしょ、舐めるなよクソカスが!



 私はずいぶん口が悪くなったと思うが、マジで淑女教育も、年号を覚えるだけの役に立たなかった歴史の授業よりも、人生の哲学になったのは、偉人達だと思う。



 私は容赦なく言い返す。



「別に反省などしなくていいから、ユリアさんの所に行ってくださいませ、私はユリアさんを心配しているだけなのですから!」



 強く言ってやった、実際は別にユリアさんを心配していない、会ったことも無い方なのだから、とは言え、知らない人でも困って欲しいと思うほど酷いわけでもないので、ギリギリ通用するラインを突いたつもりである。



「君は本当にユリアを心配しているのか?」


 などと明後日なことを聞いてくるアホ男……



 私は笑顔で堂々と言ってやる!



「もちろんですわ、何度も言ったでしょう?私はユリアさんが心配で、そんな心配をする貴方が素敵であると!」



「……すまない!なんて素晴らしい妻を僕は持てるのだと感動したよ!」


 何て言いながら、ユリアさんの元へと向かって行った……



 馬鹿過ぎかこいつと思ったが、これはいい変換をしてくれた。


 こいつはきっと私をいい妻だと信じ切るだろう。


 結婚後伯爵家を、どんどん私が都合がいいようにしたとしても。


 なるほど、こう言う馬鹿が家を乗っ取られるようなことをするのね。

 歴史的なことと、現在の私の状況が、生まれて初めてリンクしたと思ったのであった……



 そしてあいつは私を信用しきったのか、ユリアさんに会わせたいなどと言い出した。そしてユリアさんがいる伯爵家へと向かう……


 初めて出会ったユリアさんだが、別に悪い人では無かった。



「はじめまして、スカーレットさん、いつもチャールズの世話になるばかりですみませんでした」


 などと謝罪してくる。私は、



「いいえ、お気になさらないで下さい、むしろ幼馴染という深い関係ですので、その邪魔をするなんてことは私はしたくないですし、ましてユリアさんが病弱であるのでしたら、人として心配して当然です!」


 などと全力いい人アピールをしておいた、ようはユリアさんのさっきの主張が仮に本心だったとしても、私に遠慮されたら困るのだ、もっとチャールズに依存して欲しいのだから!



 こうしてユリアさんは私に終始敵視的な姿勢を見せなかったので、多分私を嫌っているとかは無く、世話になりっぱなしの自分を恥じているのだろう。


 まぁそこは分かる、分かると言いたいけどさぁ、実務的には、ぶっちゃけチャールズは役に立ってないと思う。


 ユリアさんの世話をする侍女やお医者様はいるのですからね。


 つまりチャールズには甘えているだけなのだ、もちろん病弱で気弱になるのは理解できるが、やはり反省はしたと言っても、それは心からでは無いなとしか思わないので、ユリアさんに私も真に同情する気は起きないのであった。


 ってことで、私のためにチャールズに依存してね。


 それだけである。


 だってそれで利害一致なのだから!



 そしてチャールズだが、私が物分かりがいい妻とはき違えているので、ユリアさんのところに行くことが以前にもまして増えた。



 もうこれ大人の関係が無くても浮気レベルだよなと私が突っ込んだが、私からしたら、将来の伯爵になる夫から信頼された妻という形式が作れたせいで、本来ならば許されない振る舞いも、なし崩し的にできるだろうなってのが、明らかに分かる。


 まさか歴史を学んだ私が、歴史に出てくるような悪女になりそうなんてね、伯爵家実質乗っ取りなんてね!

 事実は歴史よりも奇なりだななどと思うのであった!
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