劣等生と光の花束〜ある魔女の秘密〜
「マシューがここに選ばれたのには、きっと特別な理由があるはずよ。今はわからなくても、いずれきっとわかる時が来るわ。さっ、お風呂に入って早く寝ましょう」

ジルに促され、マシューは浴室へと入る。ジルが沸かしておいてくれたのか、すでに浴槽にはお湯が溜まっていた。

「浴槽に浸かるなんて初めてだよ……」

マーキュリーの屋敷にいた頃は、当然屋敷のお風呂を使うことは許されず、マシューに与えられたのは冷たい水とタオルだけだった。真冬でも、冷たい水で浸したタオルで体を拭いていたことを思い出す。

制服を脱ぎ、湯船の中に入る。初めて入る温かなお風呂に、マシューは息を吐いた。

「お風呂ってこんなにも温かいんだね」

「それが当たり前なのよ。そして、この温かいお風呂がこれから毎日入れるの。ずっとずっとよ」

ジルがマシューを優しい目で見る。マシューの目の前がまたぼやけた。

お風呂から出て、すぐにパジャマに着替える。パジャマもボロボロで何年も着古しているものだ。

「髪、ちゃんと乾かしなさい」

ジルに言われ、マシューは人生で初めてドライヤーを使った。そしてベッドに座る。船にあったベッドよりも柔らかい。

(ふかふかで気持ちいい……)

マシューの意識は、一瞬にして夢の世界へと遠のいていく。それを見ていたジルはクスッと笑い、「おやすみ、マシュー」と言ってマシューの額にキスを落とした。
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