逃げられるものならお好きにどうぞ。
「百合子さん、騙されたんだよ。あいつは人を揶揄うことが趣味だからね。――で、今のは皇さんには揶揄われていただけってこと」
「……で、でも黒瀬くん、仕事が忙しくてしばらく会えないって言ってたよね? あれは?」
「あぁ、そのことか。百合子さんも見てたと思うけど、俺の今回の仕事は、さっきの奴らをあぶりだすことだったんだ。でも中々尻尾を出さなくてさ。こいつらには俺の顔も割れてたし、一緒にいると百合子さんにまで危害が及ぶかもって思ったから、しばらく距離を置こうって思ってたんだけど……まぁ、こいつらが下手な罠に引っかかってくれたおかげで一掃できちゃったから、その必要はなくなったんだけどね」
地面に伏した男たちを一瞥した黒瀬くんは、次いで目の前の男性――黒瀬くんは皇さんと呼んでいた――を見て、「そうだよね?」と確認をとるように問いかける。
「あぁ、そうだな。……にしてもオマエなぁ……いい加減、ちっとは手加減ってもんを覚えろ。コイツら死んでねーだろうな」
「まさか。さすがにそんなへましないよ」
カラリと笑う黒瀬くんに、皇さんは痛そうに頭を押さえながら「……とりあえずコイツらの後始末をしねぇとな。椿は嬢ちゃんと先に帰っていい」と何処かに向かっていった。
というか――つまりは全部、私の早とちりだったってことだよね。