逃げられるものならお好きにどうぞ。
「ちょっと待って。黒瀬くんが払うなら、私だって払うよ」
「大丈夫だよ。そもそも今回の旅費は、元々俺が全額支払ってるから。百合子さんに払わせるつもりなんてなかったしね」
「……え? だって私、黒瀬くんにお金、渡したよね?」
黒瀬くんがネットで予約をしてくれるって言うから、代金は黒瀬くんに直接手渡した。黒瀬くんも、確かにそれを受け取ってくれたはず。
「うん。百合子さんに返しても絶対に受け取ってくれないだろうなって思ったから、俺が預かってた。いつかこっそり返そうと思って」
「こっそり返すって……」
ここの宿代だって決して安くはないし、黒瀬くんは彼氏とはいえ、年下だし……。いや、歳の差を理由にするのは違うかもしれないけど、でも、だからって全額支払ってもらうのは、さすがに申し訳ない。