逃げられるものならお好きにどうぞ。
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「……ん、此処は……」
「お姉さん、目が覚めた?」
目を覚まして最初に感じたのは、酷い頭痛。
そして聞こえてきたのは、耳馴染みのいい男の子の声だった。
こめかみのあたりを抑えながら身体を起こす。ズキズキと鈍い痛みを訴えているこれは、飲み過ぎたのが原因だろう。
お酒はそこまで強くないから、外ではあまり飲まないように普段はセーブしているのに……。
「はい、これ水ね」
視線を上げれば、上半身は裸で、首にタオルをかけている男の子がミネラルウォーターを手渡してくれた。
視線はベッドの上に落としたままお礼を言って受け取り、中身の三分の一程を一気に飲み干す。
落ち着いて周りを見渡せば、此処はどこかのビジネスホテルのようだ。
ハッとして自身の身体を確認するけれど、特に衣服が乱れた形跡はない。とりあえず間違いを起こしたりはしていないようだ。