逃げられるものならお好きにどうぞ。


「ちょっとちょっと! 百合子の彼氏くん、イケメン過ぎてびっくりしちゃった! あんな優良物件中々ないんだから、絶っっ対に逃がしちゃ駄目だからね!?」

「あはは、うん。それでゆっちゃんは、これからどこか行くところだったの?」

「あ、実はね、これから中学の時の子と何人かで集まって飲みに行く予定なのよ。百合子も一緒にどう? って言いたいところだけど……さすがに彼氏くんを置いて行けないわよね」

「うん、ごめんね」

「大丈夫よ! また機会があったら誘うから。百合子も、またこっちに帰ってくる時は、連絡ちょうだいね」

「分かった。連絡するね」

「あ、っていうか、まずは連絡先を交換しましょ。私、専門入ってる時にスマホ水没させちゃってさ。連絡先全部消えちゃったのよ」



スマホの連絡ツールアプリを開いて、ゆっちゃんと連絡先を交換していれば、前方から誰かが近づいてくる足音が聞こえてくる。

顔を上げた私は、その人物を視界に映して――その瞬間、自分の胸の中がスッと冷えていくのを感じた。

< 470 / 581 >

この作品をシェア

pagetop