逃げられるものならお好きにどうぞ。
「……そうですか。想像通りの女じゃなくてすみませんね! お淑やかなお姉さんを探しているなら、どうぞ他を当たってください」
「ん? お姉さんってばまた怒ってるの?」
私の考えてることなんて多分、全部お見通しだろうに、男の子はまた白々しい笑みを浮かべて、何を考えているのか分からない黒漆のような瞳で私をじっと見つめてくる。
「……もう帰ります。お金はここに置いておくので」
ベッドから出て、財布から一万円札を一枚抜き取ってサイドテーブルに置いておく。
いや、でもバーでの代金もおそらくこの男の子が支払ってくれたのだろうと考え、更に追加で一枚置いておいた。
これきりの関係だし、後腐れなくしておきたいからね。
「今夜は泊っていけば? もう遅いし、女の子が一人じゃ危ないよ」
「大丈夫です。それでは」
男の子の顔も見ずに、短い言葉を返してホテルを出た。
秋風が頬を撫でる。
少し肌寒くて無意識に二の腕を擦りながら、スマホで地図アプリを開いて最寄りの駅に向かって歩く。