Fahrenheit -華氏- Ⅲ
準備はいい?
♥Ruka♥
「うっれしいな~♪瑠華ちゃんから誘ってくれるなんて♪」
目の前でホットカフェオレを飲んでいる葵さんは本当に嬉しそうだ。
一体―――このひとは何でこんなに楽しそうなのだろう。
何故、常に笑っていられるのだろう。
そんなことをぼんやりと考えホットコーヒーに口を付ける。
「それより、いいの?ここ会社の近くでしょ?前は近づくなって言ったのに、どう言う風の吹き回し?」葵さんがきょろきょろ辺りを見渡し不思議そうに聞いてくる。
確かに―――あたしの指定したのは会社のすぐ近くのファミレスだ。こう言うとき24時間営業なのはありがたい。
「考えが変わりました。それに今あなたと会っているのは単なる時間つぶしです」
目も上げずそっけなく答えると
「時間潰し?ひっでーな」と、本気で『酷い』とは思っていなさそうな口調で葵さんは口を尖らせる。
「それより二村さんにメールを入れてくれましたか?」
ここに来る前、あたしが葵さんに頼んだことだ。
「うん。”久しぶりにミミちゃんも一緒に三人で飲もうぜ”って誘ったら、あいつ残業だって~」
「そうですか」
あたしは口の端でふっと笑った。
瑞野さんの名前を出してまで”残業”したい理由―――あたしは……ううん、あたし”だけ”は知っている。
「今度は何企んでるのさー」と葵さんが興味深そうに身を乗り出す。
「お教えできません」
そっけなく言ってカップをソーサーに置く。
「ふーん、まぁいいけど。あんま危ないことしないでよ。
空汰を甘く見ない方がいいって前に忠告したよね」
「その言葉、そっくりそのまま二村さんにお返ししたいですね。
”私を甘く見るな”と」