Fahrenheit -華氏- Ⅲ

悪魔の制裁。

♥Ruka♥


20XX年12月19日 月曜日


瑞野さんが外資にきて五日経った。


瑞野さんは良く働き、機転も利いてとにかく真面目だ。


目立ったトラブルはなく、佐々木さんとのコミュニケーションも円滑。けれど啓は―――彼女に少し距離を置いているように見えた。それはあたしに遠慮しているから?それとも違う理由から?


瑞野さんの体調は安定しているようで、こちらも安心した。


あたしがこっそり紹介したあたし自身行きつけの表参道の産婦人科に通院するようになった瑞野さんは、病院の対応が丁寧で親切で安心して通えるとも言っていた。しかしつわりが酷いようで、仕事中何度もお手洗いに駆け込む様子は心配だ。あたしの時は瑞野さん程酷くはなかったけれど個人差はあるし、仕方がないと言えば仕方がないけれど。


そして綾子さんからは『啓人が瑞野さんの出向の件、聞きに来たわ』と聞かされた。


当然、綾子さんの所に行くと踏んでいたあたしは瑞野さんの妊娠を知って驚いていた彼女に強く口留めをした。


あたしは綾子さんのことも信頼している。綾子さんが頷いたのなら絶対貫きとおしてくれるだろう。そして何故啓に打ち明けないのか、も聞いてこなかった。やはり綾子さんも秘書だ。余計なことは聞かないし言わない。


時折綾子さんから瑞野さんは大丈夫?と言う心配の連絡をもらうが、あたしが注視している限り今のところ安泰はしている旨を話すと安堵してた。


勿論、おじさまも同様、啓に何を言われても絶対にあたしと口裏を合わせてくれると約束してくれたが、啓はよほどおじさまと連絡を取りたくないのだろう、おじさまには何も聞かれていない、と言う。


どうなっているのだ、この親子は。


< 766 / 833 >

この作品をシェア

pagetop