Fahrenheit -華氏- Ⅲ

嬉しかった。涙が出てきそうなぐらい。


「So what shall we eat? I bet there's lots of good food.
(そう、何を食べよっか。きっと美味しいものたくさんあるわよ)」とユーリを下ろしながら彼女の髪をそっと撫でると


「I have something I want to eat.
(ユーリ、食べたいものがあるの)」とユーリは勢いよく手を上げた。


何かしら。お寿司?天ぷら?お蕎麦……は渋過ぎかしら。子供が食べたいものだからハンバーグ?エビフライ、はアメリカにないだろうし。


と考えていると


「I just happened to see it in town a while ago. There was a diner or something like that. He wants to eat there.
(さっき街中で偶然見たんだ。ダイナーみたいな所があってね。そこで食事がしたいらしい)」


と、背後からスーツ姿のマックスが姿を現した。ユーリに会えたことは嬉しいけれど何でクリスマスにまでこの人の顔を見なきゃならないのかしら。


思わず目が吊り上がるのが分かった。けれどユーリがあたしのワンピースの裾をちょっと引っ張って


いけない、このひとの顔を見ると嫌悪感しか感じなくてそれがついつい顔に出てしまう。ユーリはあたしたちが離婚したこと、その意味を


知ってるのか知らないのか、分からないから。


せめてユーリの前だけでも普通の夫婦を演じなければ。


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