真昼の星空
「先にシャワーしてきていい?」

雅人一瞬固まる。

「え?」

「泊まってくれるの?」

陽自然に言う。

「うん。」

少しだけ照れながら。

「Tシャツ貸してくれる?」

雅人嬉しさを隠せない。

「わかった!」

「洗面所にあるもの好きに使って!」

「歯ブラシも置いておくね!」

陽笑う。

「ありがとう。」

ドアが閉まる。

水の音が聞こえる。

雅人ソファに座る。

深く息を吐く。

(夢なら冷めないでくれ)

本気で思う。

天井を見る。

目を閉じる。

(戻ってきた)

(ようちゃんが)

洗面所――

陽シャンプーを手に取る。

止まる。

「…これ。」

匂いを確かめる。

「一緒に行ってた美容院のだ。」

少し笑う。

(あの後美容院も変えたんだよな)

(見つかりたくなくて)

(若い頃の自分の意地)

(頑固だよな)

ため息をつく。

「そこまですることないのに。」

少しだけ目が潤む。

(あの頃の自分に言ってあげたい。)

(もう少し素直になりなって。)

シャワーの音に紛れて小さく言う。

「大丈夫だよ。」

「ちゃんと戻ってきたよ。」

雅人のTシャツとスウェットを着た、

すっぴんの陽が出てくる。

少し大きい袖。

濡れた髪。

化粧のない顔。

でも――

一番見たかった陽。

雅人固まる。

「……」

頭を抱える。

「か…可愛すぎる…」

陽吹き出す。

「なにそれ。」

雅人近づく。

そのまま抱きしめる。

顔を肩に埋める。

「やばい。」

「我慢出来ないかも。」

陽笑いながら背中をぽんぽん叩く。

「わかったから。」

「まさくんもお風呂行ってきな。」

笑いが止まらない。

雅人真剣。

「すぐ出てくるから!」

陽また笑う。

「だから逃げないって。」

ソファに座る。

「ゆっくりでいいよ。」

少し優しく言う。

「ちゃんといるから。」

雅人その言葉で少し止まる。

振り向く。

「…ほんと?」

陽頷く。

「うん。」

「もういなくならないよ。」

雅人何も言わず風呂へ向かう。

ドア閉まる。

陽ソファに座る。

部屋を見渡す。

静かな部屋。

雅人の匂い。

雅人が出てくる。

髪が少し濡れている。

陽見る。

「まさくんあのシャンプーって…」

雅人すぐ分かる。

「そうそう。」

「まだあの美容院いってるよ。」

タオルで髪を拭きながら。

「ようちゃん来なくなったって聞いてたけど、もしきたら教えてって。」

陽少し驚く。

「え?」

雅人少し照れる。

「もしかしたら会えるかなって思って。」

陽笑う。

でも少し泣きそう。

「ほんと、私頑固だったね。」

「そこまでしなくたっていいのに。」

雅人首を振る。

「普通だよ。」

陽続ける。

「写真もまさくんとの大切な思い出消しちゃって。」

少し詰まる。

「ほんとバカみたい。」

雅人静かに言う。

「バカじゃない。」

陽見る。

雅人続ける。

「忘れようとしてたんでしょ。」

「それくらい好きだったってことじゃん。」

陽言葉を失う。

雅人優しく言う。

「俺は消せなかった。」

「弱かったから。」

陽すぐ否定する。

「違うよ。」

「優しかったんだよ。」

少し間。

雅人小さく聞く。

「…今は消さなくていい?」

陽少し笑う。

涙を拭く。

「うん。」

「もう消さない。」

そして言う。

「これからまた増えるから。」
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