ミドサーですが、うっかり恋に堕ちまして
プロローグ
—— 恋愛はしばらく休業。
そう決めたのは五年前のこと。
長らく恋愛から遠のいている私にも、恋に恋した時代があった。
二十代。当時交際していた恋人は商社に勤務していてバリバリ仕事をこなす、いわば仕事人間。
そんな彼を尊敬していたし、支えになりたいと思っていた。
結婚を匂わせながら、仕事を理由に先延ばしにされ続け、気づけば三十の誕生日。
その日、『お互いのためにも別れよう』と、彼は言った。
まだ仕事に集中したいのだと。
海外赴任が決まっていたはずの彼の、駐在妻になる未来を本気で想像していたというのに……。
たくさん泣いたし落ち込んだ。まるでこの世の終わりか、というくらい。
その半月後、彼は職場の二十代前半の新入社員との結婚を発表した。
親友たちは私以上に怒ってくれて、泣いてくれて、慰謝料請求しようと言ってくれたけれど、そこまでするのはやめておいた。
そんなことよりも、早く忘れてしまいたかったから。
それ以来、私は誰かを好きになることを休んでいる。
恋愛は絶賛休業中だ。
期待して傷つくくらいなら、初めから一人でいい。
仕事を頑張って、たまの休みに温泉に行って、美味しいものを食べて、誰にも気兼ねなくのんびり過ごす方がずっと楽しい。
浅川真夏。
帝東大学病院附属メディカルセンターの外科病棟の看護師として働く三十五歳独身。
いまのところ、おひとり様生活に大きな不満は……ない。
けれどまさか、あんな形で終止符を打つことになるなんて考えもしなかった。
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