溺愛ヤンキーくんと1945年からの手紙
プロローグ

私に届いたのは、一通の手紙だった。

オレンジ色に染まる空。
ポストの中の手紙を開けると

ざらついた紙のような便箋が入っていた。

未来のあなたへ

  
ーーーーーーーーーー

「おい、じゃまだよ、どけよ貧乏神」

「やめてあげなよ〜、せめて名前で呼んであげな?梨々香って」

「貧乏神でちょうど良いんだよこいつ」

そう言った3人は私の横を通り過ぎて行く時に肩をぶつけて、私は尻もちをついた。

「うっわ、最悪!くっさ~い」

教室にいる同級生たちは私を見てみぬフリ。
なんなら、ほとんどの人は一緒に笑っている。
私はしばらく立ち上がれなかった。

確かに家が貧乏で昔から好きな洋服、アクセサリー、化粧品、何一つ買ってもらえなかった。

化粧品がほしいと言うと

「あなたは、可愛いんだから」

毎日毎日同じ言葉。お金がないだけじゃん。

そんな言葉が欲しいわけじゃない。
キラキラしたようなメイクブラシ。
ブランド品の口紅。

買ってよ。みんなと同じような化粧道具....

「お~い。日直さ~ん、早く宿題集めてよ」

「やめなよぉ、貧乏だから朝ごはん食ってなく
て頭回んないじゃね?」

あぁ、もう腹立つ。
貧乏な家に生まれた私も、このクラスも。
早くここから消えたい。

私はクラスの宿題を集めた。 

床ってこんな綺麗だったかな。

ーーその瞬間、廊下で騒いでる声が聞こえた

「おい、蓮!やめろよ」

....え?喧嘩してる。しかも同じクラスの
蓮くん??

クラスが静まり帰ってみんな窓ガラスから眺める。

....あの人、イケメンヤンキーって騒がれてるけど、私には無理だ。

金髪にピアス、毎日顔に傷つけて登校してくるし、タバコの匂いぷんぷんだし、私とは別世界の生き物だ。

今日は学校で喧嘩...か。

その時、彼に突き飛ばされた男の子が、私のいる窓ガラスに向かって倒れてきた。

それと同時に後ろからポンっと誰かに押された気がした。

.....嘘。ガラスにぶつかる!!



バリーン!



私は気がつくと手から血が流れていた。

...痛い、痛すぎる。早く保健室に行かなきゃ。
私は保健室まで走った。
私が通ってきた廊下はポタポタと血が流れ落ちていた。

廊下にいる生徒達は私に視線を向け、コソコソ言ってるのがわかる。

こんな状況になってまで、誰も心配してくれない.....

保健室の扉を開こうとした時、

え...?開いてない?鍵がかかってる。

扉に貼られていた紙には
''職員室にいます、会議中です"と書かれていた。

ーうそ。
痛い...意識が飛びそう。

その瞬間、後ろから誰かが支えてくれた。

目の前がぼやけたまま、私は視線を向けた。
「おい、大丈夫か?」

....だれ?

体がふわりと浮いた。
私の足と肩に暖かい手が支えられているような感覚。

誰か来てくれたんだ...よかった。

あぁ、もうだめ....意識が...

次に目が覚めると白い天井がぼやけて見えた。

恐る恐る目を開ける。

....あれ?ここどこ?保健室?

周りを見渡すと見覚えのない部屋だった。

保健室にしては広すぎるしベッドも多い。
病院....??

視線を手に向けると
少し血がついた包帯が巻かれていた。

よかった....

ふと思い出した。
私を支えてくれた人誰だろう、聞き覚えのある声だったんだけど...思い出せない。

その時、扉が開いた音がした。

え?蓮くん?
なんでここにいるの?

病室の扉を開けて私に向かって歩いてくる。

もう、いやだ。
私は目が覚めた瞬間から地獄だ。

卒業するまで関わりたくなかった人なのに...


「わりい、俺が周りを見ずにあいつを突き飛ばしたから、ガラスが割れて」

「....だ、大丈夫ですよ、お気になさらずに。」
私は、咄嗟に窓に視線を向けた。

「お前を追いかけたら、保健室の前で倒れそうになってたから」

あの声、蓮くんだったの?
確かに、声も、ぼやけたままでもわかるぐらいのイケメンだった。

「すみません。覚えてなくて」

「もう大丈夫ですから、気にせずお家に帰ってください」

私は早く追い返そうとした。
この雰囲気めちゃくちゃきまずい....

「お前の母さんが今、仕事終わって迎えにくるらしいから、それまでいる」

彼はベッドの縁に座った。

....なんでベッドの縁。
身動き取れないじゃん。
せめて椅子に座ってよ....

私は頭の上にあったナースコールで椅子を持っ
てきてもらおうと思って押そうとした。

「なんでお前敬語なの?同級じゃん」
私に視線を向けた。

その瞬間、ナースコールを押そうとした手が無意識に下がった。

「あぁ、いや、なんとなく..です」

私は布団の端を握った。

「もう少し、ハッキリ喋ってくれねーか」

「あ、す、すいまーーー」

「また謝んの?俺にびびってんのかよ」
蓮くんは私の声に被せて言った。

怖いに決まってるじゃん.....

いつも喧嘩して傷だらけで、タバコの匂いまでして、髪の毛は金髪だし。

「....はい、すこしだけ...」

私はどんどん声が小さくなっていった。

「.....わりぃ、帰るわ」

彼は私に背を向けて病室を出ていった。

顔色が一瞬変わったような...
助けてくれたのに、悪い事言っちゃったな。

明日頑張って謝ってみよう.....

その瞬間、病室の外からお母さんの声が聞こえた。

「すみません、支払いを来月まで待ってもらえませんか....」

そんな言いにくそうに言わないでよ.....

しかも聞こえてるよ、恥ずかしい。
私は布団を頭まで被った。

普通の家庭に産まれてたら
もっと普通の暮らしができて恥ずかしい思いもしなかったんだろうなぁ....

病室の扉が開いた

「梨々香大丈夫?先生から話は聞いてるよ」

「こんな所でお金の話するの、やめてよ」

私は布団の中に潜ったまま
お母さんの顔を見ることができなかった。

「そうだよね、ごめん。」

お母さんは少し困ったような声で言った。


私はゆっくりベッドから降りて

帰る準備を始めて病室を出た。

その時

病室の扉の横で待ち伏せしてた蓮くんがいた。

「...え?帰ったんじゃ....」

絶対今さっきの話、聞いてるじゃん...
しかも、気まずい。

「お母さん、大事な娘さんに怪我をさせてしまってすみませんでした。僕がいる時はちゃんと守るんで」

彼は私のお母さんに深く頭を下げていた。

こんな蓮くん始めてみた.....

学校の先生にさえも口悪いのに。

「頭を上げてください。私の責任でもあります、危ない場所には近づかないよう、ちゃんと伝えられていなかったので、学校の時はよろしくお願いします」

「はい、俺が必ずそばにいます」

そばにいるって....そんな事できないし。
私といたら蓮くんまで嫌な思いするんじゃないかな。

私たちはそのまま病院を出て
車に乗った。

窓の外をぼーっと見つめながら
さっきの事を思い出す。

怖いなんて言っちゃったな.....
あんな事するなんて、本当は良い人なのかな。

蓮くんに絶対明日謝ろう。

私は家に着くと、同じ学校の子がいないか確認して車を降りた。

ボロボロの一軒家、窓にはガムテープ。
瓦も剥げてるし恥ずかしい。

隣の家と比べると天と地の差だ。

なんでこんな綺麗な家の横に
ボロい一軒家があるの....

家に入って玄関を上がると、ギシギシと床の音がする。今すぐにでも床が外れそう。

壁には私が小さい頃に書いた落書きがずっと残ってる。
お母さんが寂しいから消したくないって。

お金は無いけど、愛だけは多分誰にも負けてないんだよなぁ....

「梨々香ー、なんかポストに意味わからない手紙が入ってたんだけど...梨々香にかな?」

私はお母さんが渡してきた手紙を受け取った。

初めて見た古いザラザラした便箋、角は少し破れて最近の手紙っぽくなかった。

開けてみると中には筆のような文字で書かれていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
未来のあなたへ

もしあなたが手紙を読んでくれているのだったら

私の願いを叶えてください。

もうすぐ私の大切な人は特攻隊として飛び立ちます。

あなたの世界が平和と幸せで溢れているなら

もう一度あの人に恋をしてください。

どうかーーーー

最後まで幸せになってください。
   
       1945年のあなたより

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 何これ?イタズラ?

住所も書いてないし、イタズラとしか思えなかった。

....ん?何か薄く文字が....
薄すぎて読めない.....

気味が悪くなって
私はゴミ箱に捨てようとした。

「取っておいたら?もしかしたら間違って入れてるのかもしれないよ」

私は鍵付きの引き出しの中に綺麗に入れた。

こんな古い手紙、誰のかな。

特攻とか、1945年の私よりとか

そんな昔の手紙が私に届くわけないか....



....眠い。早くお風呂とご飯済ませて寝よう。
明日も学校か....行きたく無いな。
本当に蓮くん私のそばにいるのかなぁ.....

私はそんなことを考えながら、
腕にビニール袋を巻いてお風呂に入った。

お風呂から上がると手紙の事を忘れるくらい私の食欲をそそるような、良い匂いがした。

いつものパジャマを着てキッチンに行くと
テーブルの上に並べられているのは
私の大好物のトンカツだった。

「今日トンカツ!?」

「昨日、半額だったから買っておいたの。
ラッキーでしょ?梨々香には内緒にしておこうと思って」

お母さんは自慢げに笑った。

「お母さん、半額見つけるの上手だもんね」

「いただきます。お母さん、ありがとう」

衣はサクサクして、お肉は柔らかくて、お母さんの手作りのタレ。

「美味しいよ!明日も食べたいくらいだよ」

「よかった。奮発しちゃったから」

私は嬉しそうなお母さんを見ながら、嫌な事があった事全部忘れていた。

「ご馳走様、ほんとおいしかったよ、お礼に食器洗いたいけど、ごめんね」

「気にしないで、今日はもう遅いからゆっくりしなさい」

「うん、わかった、おやすみなさい」

私は食器だけを下げてそのまま部屋に戻った。

ベッドに横になって天井を見ながら、机の中にしまった手紙のことをまた考えた。

もう一度あの人に恋をしてください。かぁ...

ドラマみたいだな。

持ち主見つかるまで開けないでおこう。

手紙の事を考えたままそのまま眠ってしまった


んん...眩しい。

カーテンの隙間から太陽の光が差し込んで目が覚める。

もう少し寝てたいなぁ。
でも、もう準備しないと。
今何時だろう。

時計を見ると7時45分だった。

ヤバ、大寝坊じゃん。

私はベッドから飛び起きて、慌てて準備をした。

お母さん、もう仕事行ったかな。

私も早く学校行かないと。

キッチンに行くとテーブルの上に朝ごはんが並べられてる。

仕事行ってくるから、ご飯食べてね。
 お母さんより。

置き手紙が置かれていた。

お母さんごめん!食べる時間なかったよ。

私は急いで靴を履いて飛び出した。

その瞬間、私は心臓が止まりそうだった。

....え?なんで....

玄関前には蓮くんが腕を組んで待っていた。

「遅刻するぞ。走れるか?」

そばにいるって、家から....帰るまで?

いやいや、今は遅刻しそうだから走らないと。

「はい...」

「お前のカバン貸せ」

「え、でも」

私の返事を待たずに肩に掛けてたカバンを取った。

「怪我、してんだろ、走るぞ」

私たちは走りながら学校に向かった。

...息が苦しい、蓮くん早い...

「ゴホ、ゴホ」

「大丈夫か?ここまで走ったら間に合うだろ」

なんでここまでしてくれるんだろう。
優しいのか怖いのか、わからないけど
今は優しい気がする。

昨日のこと、謝ろう....

「蓮くん」

彼が私の声に振り返った。

....がんばれ、私

「昨日は、ごめんなさい、怖いなんて言っちゃって」

「こんな見た目だからあたりめーだよな。怖い相手に謝るとか、勇気いるだろう。ありがとな」

「蓮くん、カバン持ってくれたり、責任感じてるだけかもしれないですけど、優しい所があるんだなって。思いました」

「なにそれ、感想文かよ」

彼は学校では見た事ないくらいの顔で笑った。

....やば、笑顔かわいい...

「かわいい....」

....え?何言ってんの私。

私は頭の中で考えていた事が声に出てしまった。

「お前、おもしれーやつだな、そんな事言われたの初めてだよ」

彼は私の頭を軽くポンっと叩いた。

その瞬間

私の心臓がドクンと鳴った。

心臓がはやい。なんでこんなにドキドキしてるの。

やっと呼吸が戻ったのに、また苦しくなった。

私は彼の背中を追うように学校に向かった。

さっきの蓮くんに触れられた所がまだ熱い。

「もう少しゆっくり歩くか?」

彼が振り返って

私は慌てて首を振った。

「....おい、顔赤いぞ、大丈夫か?」

蓮くんの手が私のおでこに触れる。

「な、なんでもないです!少し熱くて!」

次はおでこなんて反則でしょ。

心臓がうるさい。少し落ち着いてよ。

私は慌てて、顔が赤いのを見られたくなくて、怪我してない方の手で顔を隠した。

「隠すの下手すぎだろ、照れてんのか」

彼はクスッと笑った。

「ち、ちがいます!照れてなんかないです!」

「じょーだん」

冗談って....程があるでしょ....もう恥ずかしすぎるよ。

ドキドキさせた癖に。

私はしばらく蓮くんと話す事ができなかった。

学校の校門に着くとさっきのが夢だったみたいに現実に戻った。

その時、いつも私をいじめてる3人が反対方向から歩いてきてるのが見えた。

今日もまたいじめられるんだろうなぁ。
蓮くんには見られたくないから先に行っててもらおう。

「蓮くん、先に行っててください。ここまでで大丈夫です。私保健室に行ってから行くので」

「俺もついていく、あぶねーから」

「大丈夫です!何かあったら言いますから!」

その瞬間、後ろからいつもの声が聞こえた。

「あれ〜?包帯してんじゃん」

出たよ....言ってくると思ったから、覚悟はできてたけど、いざ言われると怖い。

しかもまだ蓮くんいるし。

「包帯から血が見えてるよ。汚ねぇな」

「ねぇ、こうすると痛いの?」

そう言った子は自分で持ってたカバンを私の手に投げた。

その瞬間、腕にズキっと痛みが走った。

...ッ!

痛い.....やめてよ。

私はそのまま地面に座り込んでしまった。

「おい、何してんだよ」

彼の声が今まで聞いた事のないものすごく低い声で言った。

「え、なんで蓮が?」

「こいつ、俺の女だから」

え!?え!?

私は一瞬で痛みが消えて頭が真っ白になった。

付き合って....ないよね
昨日お母さんと守るって約束したからかな。

それにしても、この状況はやりすぎだよ....






 
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