友達のまま
涙が溢れそうになって、私は慌ててうつむいた。


もし今、この涙を翼に見せて、「行かないで、私の恋人になって」と言ってしまったら、私たちはいつか、普通の恋人同士のように別れる日が来て、赤の他人になってしまうかもしれない。


そんな終わりが来るくらいなら、私は一生、彼の「アミ(友達)」のままでいたい。


友達という名の、絶対に壊れない『永遠』を、私は何よりも愛しているから。


「うん……! ありがとう、翼。私も、東京にいる翼の『一番の友達』の席は、誰にも譲らないからね」


私は涙をぐっと堪えて、顔を上げ、満面の笑顔で翼を見つめ返した。


翼は私の笑顔を見て、一瞬だけ、すべてを悟ったような、ひどく切なくて愛おしそうな目で微笑んだ。


彼もまた、私を一生失いたくないからこそ、この「友達」という境界線を、笑顔で受け入れてくれているんだ。


「あぁ。ずっと、世界で一番の友達でいような」


翼が笑って、大きな手を差し出してくる。


私はその手を、ぎゅっと握り返した。


恋人のように指を絡めるわけじゃない、ただの、力強い握手。


だけどそこには、どんな恋人たちの誓いの言葉よりも深く、強固な、嘘つきな私たちの愛が詰まっていた。


普通の恋のように退屈になって終わるくらいなら、私たちは世界の果てまで、この美しい嘘を抱きしめて歩いていく。


「よし、帰ろ! 翼、最後だから駅まで競争ね!」


「あ、ずるいぞアミ! フライングすんな!」


オレンジ色の夕日の中、私たちは笑顔のまま、明日からの新しい未来へと走り出す。


お互いの胸の奥にある、狂おしいほどの独占欲と愛を、最高の笑顔の仮面で隠したまま。


これが、恋人にならない私たちが選んだ、永遠に終わらない、一番優しい物語(ロマン)の結末――。


(『友だちのまま』── 完結)
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