余所者-よそもの-


「っ痛……」

ゆっくりと迫る拳が、私の額を押す。
縫合したばかりの傷口にキリキリと痛みが走った。


――『アイツのことは” シド ”と呼べ』

二度目だ。
この不思議な瞳は私の脳みそを弄って、思考という思考を取り上げてくるから嫌だ。



「怜を止めろ」


止めるって、何を?


「行け」



多夜の視線の方向に目をやるのと同時に、私の身体は動く。

途端、動き始める時間。
耳に流れ込んでくる、野外の音。

飲食店の通気口の音と、コンビニの開閉音、走る自分の足音。


五感が一気に解放されて。
やがて、人だかりを見つけた。



< 103 / 276 >

この作品をシェア

pagetop