余所者-よそもの-


「元カレです」

「元カレ?」

想定外だったらしい。珍しくユキの表情が崩れた。


「元カレって、お前をシトウに置き去りにしたっていう?」

「そうです。もうとっくに地元に帰ってると思ってたんですけど」


ユキは「なんだ」と言った。
まるで『そんなことだったのか』という温度で。


たしかに、ユキには関係のない話だ。

シトウの街の誰かとのモメ事じゃない。
これは彼と私の、ただの痴話喧嘩。


「ヨリを戻すの?」

「戻さないですよ」

「じゃあどうするの?」


どうする。

一度この街で顔を合わせてしまった。
彼が私に執着しているなら、また遭遇するかもしれない。


「逃げれば」

「え?」

「お前がシトウに来たのは男から逃げるためでしょ。でも見つかった。だったらまたどこか知らない街に逃げればいいんじゃない?」


会いたくないのなら、どこまでも逃げればいい。

そう。
それはとても合理的な考え。


それでも。
ユキにお前はここに要らないと言われたみたいで、胸が痛かった。

いっそ話を変えてしまいたかった。


「珍しいですね」

「何が?」

「ユキさん、こういう話興味ないと思ってました」


< 148 / 276 >

この作品をシェア

pagetop