トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
「現場上空へ到着します。着陸地点の確保、完了」
ヘッドセットからパイロットの声が聞こえ、窓の外を見下ろす
高速道路の一角が完全に封鎖され、パトカーの赤色灯と消防車、そして救急車が群がっていた
完全に規制され、静まり返った道路の中央には、フロント部分が原型を留めないほど無残に大破した乗用車が転がっている
「降ります!」
ヘリがアスファルトに着陸した瞬間、ドアが勢いよく開いた
ローターが巻き起こす凄まじい熱風が機内に吹き込んでくる
私たちはすぐさま、重い救急資機材を両手に抱えて現場へと駆け出した
「患者情報、お願いします!」
ドクターが走りながら叫ぶと、先着していた救急隊員が血相を変えて報告してくる
「四十代男性! 運転席のハンドルに胸部を強打! 先ほど挟まれの解除が完了しました! 意識レベルはGCSでE2V3M5! 血圧は現在、80台まで低下しています!」
……低い。ショック状態だ
ストレッチャーの上に横たわる患者さんの顔を覗き込む
顔色は紙のように蒼白で、額にはびっしりと冷や汗が浮かび、呼吸も浅く、今にも絶えそうなほどだった。
「FAST(簡易超音波検査)やります!」
ドクターがすぐさまポータブルのエコーを患者さんの腹部に当てる
その間に、私は流れるような動作で心電図モニターを装着し、高濃度酸素の投与、太い針での静脈路確保、そして自動血圧計のスタートボタンを押した
周囲では消防の怒号やサイレンが飛び交い、現場は修羅場のように慌ただしい
けれど、私の頭の中だけは、驚くほど冷徹に透き通っていた
『この患者さんの命を、絶対に救う』
今、私の小さな脳細胞で考えるべきことは、ただそれ一点だけだった
『——腹腔内出血の疑い濃厚! 右の肝破裂を疑う!」
エコーの画面を睨みつけながら、ドクターが悲痛な声を上げた。
血圧が急激に低下している原因は、これだ
お腹の中で、大量の血が溢れ出している
「至急、基地病院へ搬送! 搬送中にルートから輸液全開でいって」
「了解! 輸液、全開でいきます!」
私は即座に指先を動かし、点滴のクレンメを全開にして、患者さんの腕へと急速輸液を開始した
そして、ストレッチャーを動かす直前、私は患者さんの冷たくなりかけた手を、両手でぎゅっと強く握り締めた
「……大丈夫ですよ! 聞こえますか? 今から、一番設備の整った病院へヘリコプターで向かいますからね! 頑張ってください!」
意識が完全に遠のきそうな患者さんに向けて、私は機内の轟音に負けない声で、何度も、何度も声をかけ続けた
もちろん、患者さんからの返事はない
それでも、人間の聴覚は最後まで残ると言われている
だから、私は話しかけるのを絶対にやめない
絶望の淵にいる人の心をこちらの世界に繋ぎ止めること、それもまた、私たちフライトナースの絶対に譲れない大切な仕事だからだ
ヘッドセットからパイロットの声が聞こえ、窓の外を見下ろす
高速道路の一角が完全に封鎖され、パトカーの赤色灯と消防車、そして救急車が群がっていた
完全に規制され、静まり返った道路の中央には、フロント部分が原型を留めないほど無残に大破した乗用車が転がっている
「降ります!」
ヘリがアスファルトに着陸した瞬間、ドアが勢いよく開いた
ローターが巻き起こす凄まじい熱風が機内に吹き込んでくる
私たちはすぐさま、重い救急資機材を両手に抱えて現場へと駆け出した
「患者情報、お願いします!」
ドクターが走りながら叫ぶと、先着していた救急隊員が血相を変えて報告してくる
「四十代男性! 運転席のハンドルに胸部を強打! 先ほど挟まれの解除が完了しました! 意識レベルはGCSでE2V3M5! 血圧は現在、80台まで低下しています!」
……低い。ショック状態だ
ストレッチャーの上に横たわる患者さんの顔を覗き込む
顔色は紙のように蒼白で、額にはびっしりと冷や汗が浮かび、呼吸も浅く、今にも絶えそうなほどだった。
「FAST(簡易超音波検査)やります!」
ドクターがすぐさまポータブルのエコーを患者さんの腹部に当てる
その間に、私は流れるような動作で心電図モニターを装着し、高濃度酸素の投与、太い針での静脈路確保、そして自動血圧計のスタートボタンを押した
周囲では消防の怒号やサイレンが飛び交い、現場は修羅場のように慌ただしい
けれど、私の頭の中だけは、驚くほど冷徹に透き通っていた
『この患者さんの命を、絶対に救う』
今、私の小さな脳細胞で考えるべきことは、ただそれ一点だけだった
『——腹腔内出血の疑い濃厚! 右の肝破裂を疑う!」
エコーの画面を睨みつけながら、ドクターが悲痛な声を上げた。
血圧が急激に低下している原因は、これだ
お腹の中で、大量の血が溢れ出している
「至急、基地病院へ搬送! 搬送中にルートから輸液全開でいって」
「了解! 輸液、全開でいきます!」
私は即座に指先を動かし、点滴のクレンメを全開にして、患者さんの腕へと急速輸液を開始した
そして、ストレッチャーを動かす直前、私は患者さんの冷たくなりかけた手を、両手でぎゅっと強く握り締めた
「……大丈夫ですよ! 聞こえますか? 今から、一番設備の整った病院へヘリコプターで向かいますからね! 頑張ってください!」
意識が完全に遠のきそうな患者さんに向けて、私は機内の轟音に負けない声で、何度も、何度も声をかけ続けた
もちろん、患者さんからの返事はない
それでも、人間の聴覚は最後まで残ると言われている
だから、私は話しかけるのを絶対にやめない
絶望の淵にいる人の心をこちらの世界に繋ぎ止めること、それもまた、私たちフライトナースの絶対に譲れない大切な仕事だからだ