トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
蒼依は何度も目元を擦っている

優朔も深く息を吐いた

俺自身もまだ夢なんじゃないかと思っていた

本当にここまで来たのか

そんな気持ちだった

すると社長が再び口を開く

「一つだけ伝えておく」

自然と視線が集まる

社長は俺たちを見渡した

「勘違いしないでほしい」

会議室が静かになる

「勝ったわけじゃない」

その言葉に全員が頷く

確かにそうだ

証拠は揃った

でもまだ終わっていない

裁判もある

世間もある

これからが本番だ

社長は続けた

「だが」

「真実はこちら側にある」

その言葉には不思議な力があった

誰よりも多くの修羅場を見てきた人の言葉

だからこそ重かった

社長は資料を閉じる

「明後日、第二回会見を行う」

その瞬間会議室の空気が変わった

いよいよだ

第一回目の会見

あの日のことを思い出す

フラッシュ

無数のカメラ

飛び交う質問

何を言っても疑われる空気

胃が痛くなるような時間だった

蒼依もそれを思い出したのか

小さく顔を引きつらせる

「またあれっすか……」

思わず全員が少し笑った

社長も珍しく笑う

「今回は違う」

その一言に俺たちは顔を上げた

社長は真っ直ぐ言う

「前回は守る会見だった」

「今回は真実を話す会見だ」

その言葉に胸が熱くなった

前回は苦しかった

説明しても信じてもらえない

何も証明できない

ただ耐えるしかなかった

でも今回は違う

証拠がある

真実がある

そして戦う準備もできている

社長は続けた

「ただし」

その声が少しだけ柔らかくなる

「奏は出さない」

誰も異論はなかった

むしろ当然だった

今の奏にあの場所は耐えられない

ようやく少しずつ眠れるようになってきた

食事も少しずつ増えてきた

でもまだパニック発作は残っている

ニュースを見るだけで苦しくなる日もある

完全には回復していない

社長は静かに言った

「彼は今、治療に専念するべきだ」

「我々大人の仕事は彼を矢面に立たせることではない」

黒瀬さんも頷く

「奏には何も背負わせない」

その言葉を聞いて少しだけ安心した

奏はずっと背負い続けてきた

必要以上に

だから今だけは休ませてやりたい

社長は最後に言った

「会見が終われば正式提訴を発表する」

「相手方にも通知が届く」

つまりもう後戻りはない

全面戦争だ

でも不思議と怖くなかった

二か月前ならきっと震えていたと思う

でも今は違う

真実がある

仲間がいる

信じてくれる人がいる

そして俺たちを守ろうとしてくれる人たちがいる

会議室を出る

エレベーターへ向かう途中蒼依がぽつりと呟いた

「奏に早く伝えたいっすね」

その言葉に俺も優朔も頷いた

伝えたい

今すぐにでも

お前は一人じゃないって

ちゃんと終わりが見えてきたって

そして

俺たちは自然と病院へ向かうことになった

今日くらいは

少しだけ希望の話をしてもいい気がしたから
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