トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
「お疲れ様でしたー!」

スタッフの声がスタジオに響く

収録が終わると同時に、張り詰めていた空気がふっと緩んだ

俺たちはスタッフ1人ひとりに頭を下げながら楽屋へ戻る

「ありがとうございました」

「またよろしくお願いします」

そんなやり取りを交わしながら歩く

久しぶりだ。本当に久しぶりだった

こうして番組収録を終えて、次の現場へ向かう流れ

何度も繰り返してきた日常

当たり前だった毎日

でも2か月以上それを失っていたからこそ分かる

この忙しさがどれだけ幸せなものだったのか

楽屋に戻るなり蒼依がソファへ倒れ込む

「はぁぁぁぁ……」

大きなため息

「緊張したぁ……」

優朔がペットボトルの水を開けながら言う

「まだ1個目だぞ」

「分かってるっすよ!」

蒼依が頭を抱える

「でも久しぶりすぎるんすもん!」

その姿に思わず笑ってしまう

正直、俺もかなり緊張していた

ただ表に出さなかっただけだ

その時、黒瀬さんがスケジュール表を片手に入ってきた

「移動するぞー」

現実へ引き戻される

俺たちは立ち上がった

「次はラジオ局」

「到着後すぐ打ち合わせな」

「了解」

返事をしながら荷物を持ち、廊下へ出る

エレベーターに乗り、駐車場へ向かう

そんな1つひとつの流れすら懐かしかった

黒のワゴン車へ乗り込む

ドアが閉まりエンジンがかかる

車がゆっくり走り出す

窓の外には東京の街。相変わらず人が多い

信号待ちの人たち、ビルの広告、タクシー

いつもと変わらない景色

でも俺たちにとっては特別だった

「初日から忙しいっすね」

蒼依が窓の外を見ながら呟く

「だな」

俺は頷く

「でも」

蒼依が少し笑った

「なんか安心する」

その言葉に優朔も頷いた

忙しい。休む暇もない

移動して、収録して、また移動して

本来なら大変なはずなのに、今はただ嬉しかった

だって仕事がある事が。待ってくれていた人がいることが。必要としてくれる人がいることが

それがどれだけありがたいことか、この2か月で嫌というほど思い知った

スマホが震え、画面を見ると紗凪からだった

『生放送のテレビ見たよ』

短いメッセージ

その後に

『3人ともすごくかっこよかった』

すぐ返信を打つ

『今からラジオ』

送信すると、数秒後には返事が来た

『忙しいね』

その文字を見て俺は少しだけ空を見上げた

忙しい。本当に忙しい

でも今はその言葉が嬉しかった

車はラジオ局へ向かって走っていく

隣では蒼依が次の収録内容を確認し始めていた

優朔も台本を開いている

俺も鞄から資料を取り出す

気付けば自然に身体が動いていた

そうだ。これが俺たちの日常だった

失いかけてようやく取り戻した日常

だからこそ大事にしたいと思った

そして何よりこの日常にいつかまた奏を戻してやりたい

4人で笑いながら、また忙しいって文句を言えるように

俺たちの再スタートは、まだ始まったばかりだった
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