トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
「では次、“最近ハマってるもの”についてお聞きしてもいいですか?」

スタッフがカンペを出す

女性はカメラを向けられても全く慌てる様子がなかった

むしろ、場慣れしているような空気すらある

「最近ですか?」

「うーん……美容と旅行ですかね」

柔らかく笑う

受け答えも自然

愛想もいい

奏が軽く相槌を打つ

「へぇ、どこ行ったんすか?」

「この前は韓国行きました」

「いいなぁ」

そんな、ごく普通の街角インタビュー


——のはずだった


でも何となく

本当に何となくだけど

俺は少しだけ違和感を覚えていた

視線距離感空気の詰め方

彼女は、俺たちに対して妙に“慣れすぎている”

普通、黒騎士相手なら多少なりとも緊張する

特に女性は、最初驚いて言葉が飛ぶことが多い

でも彼女は違った

むしろ“どう見られるか”を分かって話している感じ

奏は気づいていない

いつもの自然体で会話を続けている

「ちなみに黒騎士知ってます?」

スタッフの定番質問

その瞬間女性がふっと笑った

「もちろん知ってますよ」

「え、誰推し?」

奏が軽く聞く

すると彼女は、少し考える素振りをしてから

「……奏くんです」

そう言って笑った

スタッフが「おぉ〜!」と盛り上がる

奏も吹き出した

「ほんとっすか?」

「はい」

「やった」

いつものアイドルスマイル

距離の詰め方がうまい

奏は昔からそうだ

相手へ自然に入り込む

だからファンは落ちる

男女問わず、人懐っこい

しかもあいつは無意識でやる

女性が笑う

「実際見ると、思ったより優しそうですね」

「え、俺普段どう見られてるんすか」

「もっとチャラい感じかと」

「あ〜よく言われるっす〜」

現場が笑いに包まれる

スタッフたちも「いい感じです!」とテンションが上がっていた

優朔も少し離れた場所から、その様子を静かに見ていた

するとディレクターが声を上げる

「じゃあ最後、記念に黒騎士のお二人と写真どうですか?」

女性が目を輝かせる

「いいんですか?」

「もちろんです!」

その瞬間彼女の顔が、ほんの少しだけ変わった気がした

嬉しそうに、でもどこか計算されたみたいに

スタッフがスマホを受け取り、撮影準備を始める

女性は自然に奏の隣へ立った

距離がありえないくらい近い

普通なら少し遠慮する距離感

でも奏は気にしていない様子で

「はい、撮りまーす!」

シャッター音

女性は嬉しそうに何度も頭を下げる

「ありがとうございました!」

「こちらこそー」

奏が笑顔で手を振る

俺は何となく胸の奥がざわついた

女性はそのまま笑顔で去っていく

スタッフたちは盛り上がっていた

「今の子リアクション良かったですね!」

「使えると思います!」

「奏さんさすが距離感うまい!」

でも優朔だけは笑っていなかった

俺はそっと隣へ並ぶ

「……どうしたの」

すると優朔が小さく目を細める

「いや」

短い返事

でも数秒置いて、静かに続けた

「……なんか嫌な感じした」

その言葉に俺は無意識に、さっきの女性の背中を目で追っていた

優朔のこういう''勘''は本当によく当たる

人混みへ紛れていく後ろ姿

もう顔すら見えない

なのに胸の奥に、妙な違和感だけが残る

でもその時の俺たちはまだ知らなかった

このたった数分の街角インタビューが

後に黒騎士を崩壊寸前まで追い込む“始まり”になることを
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