トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
「俺……ほんとに何もしてないっす……」

奏の声が、掠れていた

その場にいた誰も、すぐには言葉を返せなかった

スタジオの空気が重い

息苦しいほど静かで

さっきまで流れていた音楽も、今は止まっている

ただ奏の荒くなった呼吸だけが、やけに耳についた

「っ……なんで……」

奏が頭を抱える

「なんでこんなんなんの……」

呼吸が乱れている

視線も定まっていない

完全にパニック寸前だった

蒼依も声を失っている

優朔は黙ったまま、じっと奏を見ていた

——落ち着け

俺は無意識に、自分へ言い聞かせる

ここで俺まで感情的になったら終わる

俺は黒騎士のリーダーだ

今、一番パニックになっちゃいけない

そう頭では分かっているのに

心臓は嫌な音を立てていた

記事、不同意性交、ホテル、スポンサー

黒騎士

次々言葉が頭を殴ってくる

でも今、一番壊れそうなのは奏だった

俺はゆっくり息を吐く

それから奏の前へしゃがみ込んだ

「奏」

呼ぶ

でも奏は顔を上げない

肩が小さく震えていた

俺は少しだけ声を落とす

「……お前がそんなことする奴じゃないのは分かってる」

その瞬間

奏の肩が、ピクリと揺れた

「……っ」

小さく息を呑む音

奏がゆっくり顔を上げる

その目は、今にも崩れそうだった

「……ほんとに?」

掠れた声

その一言があまりにも弱くて

胸が痛くなった

俺は迷わず頷く

「分かってる」

「お前が無理やりなんかする訳ない」

「……陽貴さん……」

奏の目が赤くなる

多分今、奏には世界中全部敵に見えてる

だからこそまず俺たちが信じなきゃいけない

蒼依も我に返ったみたいに口を開く

「……そうだよお前に限ってそれはない」

奏が苦しそうに顔を覆う

「俺……どうしたら……」

「まだ全部終わった訳じゃない」

俺は静かに言う

「まず状況整理する」

「いいな?」

自分でも驚くくらい冷静な声だった

多分冷静でいないと、壊れそうだったから

奏は小さく頷く

俺はそのまま視線を合わせる

「……とりあえず、経緯を話してくれるか?」

スタジオが静まり返る

奏は数秒黙ったまま呼吸を整えていた
< 42 / 249 >

この作品をシェア

pagetop