トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
優朔たちを見送ってから

俺と紗凪は再びリビングへ戻った

さっきまで数人いた部屋は急に広く感じる

静かだった

寝室では奏が眠っている

リビングには俺たち二人だけ

俺はソファへ腰を下ろす

そして向かいに座った紗凪を見る

今日一日

どれだけ助けられただろう

奏が倒れた時も

みんなが混乱した時も

紗凪だけはずっと冷静だった

だから自然と口から言葉が出た

「ありがとう」

紗凪がきょとんとする

「ん?」

「今日」

俺は少し笑う

「本当に助かった」

すると紗凪は困ったように笑った

「なにもしてないよ」

「してるだろ」

即答だった

「奏のことも」

「俺たちのことも」

「全部助けてもらった」

本気だった

今日紗凪がいなかったら

もっと酷い状況になっていたと思う

でも本人はやっぱり首を横に振る

「私は看護師だから」

「困ってる人がいたら放っておけないだけ」

そう言って笑う

……ほんと

こういうところなんだよな

自分がどれだけ人を救ってるか分かってない

俺は小さく息を吐く

すると紗凪が時計を見る

時刻は21時半過ぎ

「今夜どうする?」

「ん?」

「奏くん」

そう言って寝室の方を見る

「夜中に起きてくるかもしれないし」

「高熱もあるし」

「一人にしたくない」

俺も頷く

確かにそうだ

今日の状態を見ていると、夜中にまた不安定になる可能性は十分ある

すると紗凪がさらりと言った

「だから私起きてるよ」

「は?」

思わず聞き返した

「夜通し?」

「うん」

当たり前みたいに答える

いやいやいや

「ダメだろ」

「え?」

「紗凪も朝から動いてるじゃん」

「でも私は明日も休みだし」

「そういう問題じゃない」

思わず額を押さえる

この人

たまに患者優先が過ぎるんだよな

「俺も起きる」

「陽貴くんも疲れてるでしょ」

「疲れてるけど起きる」

即答する

すると紗凪が少し困った顔をした

「じゃあ交代?」

俺は頷く

「それならいい」

「前半俺」

「後半紗凪」

「二人とも少しは寝る」

看護師みたいな口調になってしまった

でも譲れない

さすがに全部を紗凪一人へ任せるわけにはいかない

紗凪も少し考えてから頷く

「分かった」

「じゃあそうしよっか」

ようやくまとまった

俺がほっとした時だった

紗凪がふと思い出したように言う

「あ、そうだ」

「ん?」

「お風呂溜めておいたから」

「ゆっくり浸かってきて」

俺は思わず固まる

「……いつ?」

「さっき」

「優朔さんたちと話してる時」

さらっと言う

本当にいつの間に

俺が電話したり、奏のこと考えたりしている間にそんなことまでしていたらしい

「疲れてるでしょ?」

優しく笑う

その笑顔が反則だった

今日一日張り詰めていたものが、一気に緩みそうになる

俺は苦笑する

「紗凪ちゃん」

「ん?」

「ほんとすごいな」

すると紗凪は首を傾げる

「なにが?」

本気で分かってない顔

俺は笑ってしまった

そして立ち上がる

「じゃあ先に入ってくる」

「うん」

紗凪が微笑む

「ゆっくりね」

その声に背中を押されるように浴室へ向かう

ドアを閉める直前

ふと振り返る

ソファへ座りながら寝室の方を気にしている紗凪の姿が見えた

あぁ

本当に

紗凪がいてくれてよかった

心の底からそう思いながら

俺は静かに浴室のドアを閉めた
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