トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
俺はゆっくり通話ボタンを押した
「もしもし」
『陽貴』
黒瀬さんの声だった
昨夜よりさらに疲れている
たぶんこの人も一睡もしていない
そんな声だった
「はい」
『全員いるか?』
俺はリビングを見渡す
奏
優朔
蒼依
紗凪
全員いる
「います」
数秒の沈黙
そして黒瀬さんは静かに言った
『明日、記者会見をやることになった』
誰も声を出さない
分かっていた
分かっていたけど
実際に言われると重みが違う
俺は無意識に拳を握る
「……はい」
『事務所の方針は決まった』
黒瀬さんの声が続く
『今回の件は全面否定する』
俺は目を閉じる
予想通りだった
でもその先の言葉は予想以上だった
『そして事務所として正式に声明を出す』
『記事内容は事実無根』
『極めて悪質な報道であり誠に遺憾である』
『弁護士を立てて徹底的に戦う』
リビングが静まり返る
蒼依が小さく息を呑む音が聞こえた
優朔も表情を引き締める
奏だけは黙ったままだった
俯いている
たぶん
自分の問題がここまで大きくなったことに、まだ心が追いついていない
『会社は本気だ』
黒瀬さんが言う
『奏を守る』
『黒騎士を守る』
『そのために動く』
その言葉に少しだけ肩の力が抜けた
少なくとも会社は見捨てていない
それが分かっただけでも大きい
すると黒瀬さんが続ける
『会見にはお前ら四人全員出ることになった』
その瞬間
奏が顔を上げた
「……俺だけじゃないんですか」
掠れた声
黒瀬さんは即答する
『違う』
『黒騎士として出るんだ』
その言葉に俺はリーダーとしての意味を理解した
今回の問題は奏一人の問題じゃない
黒騎士全体の問題になっている
だから四人で立つ
逃げない
それが会社の判断なのだ
『今日の昼には資料を送る』
『予想される質問』
『その回答例』
『会見での立ち振る舞い』
『全部まとめてある』
俺は小さく頷く
「分かりました」
『絶対に感情的になるな』
黒瀬さんの声が少し強くなる
『挑発される』
『嫌な質問も飛んでくる』
『お前らを怒らせようとする記者もいる』
その言葉にみんなの表情がさらに硬くなる
容易に想像できた
記者会見は優しい場所じゃない
ましてや今回はスキャンダルだ
容赦なく切り込まれる
『特に奏』
「……はい」
『無理して喋らなくていい』
『答えは事前に決める』
『困ったら陽貴を見るんだ』
奏が小さく頷く
俺はその横顔を見る
まだ顔色は良くない
それでも昨日よりはずっと前を向いていた
電話の最後
黒瀬さんが少しだけ声を柔らかくした
『いいか』
『今はネット見るな』
『世間の声も見るな』
『俺たちが戦う』
『だからお前らは明日に備えろ』
その言葉を最後に
電話が切れた
ツー……ツー……
無機質な音だけが残る
誰もすぐには話さない
沈黙
重たい沈黙だった
そして
その静寂を破ったのは奏だった
「……怖ぇ」
小さな声
誰に向けたわけでもない
本音だった
俺は奏を見る
優朔も
蒼依も
みんな同じ顔をしていた
怖い
当然だ
明日全国に向けて話すことになる
何千万人もの人間が見るかもしれない
その中には俺たちを信じてくれる人もいる
信じない人もいる
最初から叩くつもりの人もいる
それでも逃げるわけにはいかない
俺はゆっくり立ち上がった
そして奏の肩へ手を置く
「大丈夫」
自然と口から出た
本当は俺だって怖い
でも今だけは言う
リーダーとして
仲間として
「明日は四人で立つ」
奏がこちらを見る
俺は真っ直ぐ言った
「お前一人で戦わせたりしない」
その言葉に
奏の目が少しだけ潤んだ気がした
「もしもし」
『陽貴』
黒瀬さんの声だった
昨夜よりさらに疲れている
たぶんこの人も一睡もしていない
そんな声だった
「はい」
『全員いるか?』
俺はリビングを見渡す
奏
優朔
蒼依
紗凪
全員いる
「います」
数秒の沈黙
そして黒瀬さんは静かに言った
『明日、記者会見をやることになった』
誰も声を出さない
分かっていた
分かっていたけど
実際に言われると重みが違う
俺は無意識に拳を握る
「……はい」
『事務所の方針は決まった』
黒瀬さんの声が続く
『今回の件は全面否定する』
俺は目を閉じる
予想通りだった
でもその先の言葉は予想以上だった
『そして事務所として正式に声明を出す』
『記事内容は事実無根』
『極めて悪質な報道であり誠に遺憾である』
『弁護士を立てて徹底的に戦う』
リビングが静まり返る
蒼依が小さく息を呑む音が聞こえた
優朔も表情を引き締める
奏だけは黙ったままだった
俯いている
たぶん
自分の問題がここまで大きくなったことに、まだ心が追いついていない
『会社は本気だ』
黒瀬さんが言う
『奏を守る』
『黒騎士を守る』
『そのために動く』
その言葉に少しだけ肩の力が抜けた
少なくとも会社は見捨てていない
それが分かっただけでも大きい
すると黒瀬さんが続ける
『会見にはお前ら四人全員出ることになった』
その瞬間
奏が顔を上げた
「……俺だけじゃないんですか」
掠れた声
黒瀬さんは即答する
『違う』
『黒騎士として出るんだ』
その言葉に俺はリーダーとしての意味を理解した
今回の問題は奏一人の問題じゃない
黒騎士全体の問題になっている
だから四人で立つ
逃げない
それが会社の判断なのだ
『今日の昼には資料を送る』
『予想される質問』
『その回答例』
『会見での立ち振る舞い』
『全部まとめてある』
俺は小さく頷く
「分かりました」
『絶対に感情的になるな』
黒瀬さんの声が少し強くなる
『挑発される』
『嫌な質問も飛んでくる』
『お前らを怒らせようとする記者もいる』
その言葉にみんなの表情がさらに硬くなる
容易に想像できた
記者会見は優しい場所じゃない
ましてや今回はスキャンダルだ
容赦なく切り込まれる
『特に奏』
「……はい」
『無理して喋らなくていい』
『答えは事前に決める』
『困ったら陽貴を見るんだ』
奏が小さく頷く
俺はその横顔を見る
まだ顔色は良くない
それでも昨日よりはずっと前を向いていた
電話の最後
黒瀬さんが少しだけ声を柔らかくした
『いいか』
『今はネット見るな』
『世間の声も見るな』
『俺たちが戦う』
『だからお前らは明日に備えろ』
その言葉を最後に
電話が切れた
ツー……ツー……
無機質な音だけが残る
誰もすぐには話さない
沈黙
重たい沈黙だった
そして
その静寂を破ったのは奏だった
「……怖ぇ」
小さな声
誰に向けたわけでもない
本音だった
俺は奏を見る
優朔も
蒼依も
みんな同じ顔をしていた
怖い
当然だ
明日全国に向けて話すことになる
何千万人もの人間が見るかもしれない
その中には俺たちを信じてくれる人もいる
信じない人もいる
最初から叩くつもりの人もいる
それでも逃げるわけにはいかない
俺はゆっくり立ち上がった
そして奏の肩へ手を置く
「大丈夫」
自然と口から出た
本当は俺だって怖い
でも今だけは言う
リーダーとして
仲間として
「明日は四人で立つ」
奏がこちらを見る
俺は真っ直ぐ言った
「お前一人で戦わせたりしない」
その言葉に
奏の目が少しだけ潤んだ気がした