私が拾ったのは、千年前の皇子様でした
第27話 満月と大晦日
私たちは散策を終え、家へ戻った。
帰る頃には、空は茜色から群青色へと変わり始めていた。
母は台所で夕食の支度をしている。
父はもう日本酒を飲み始めていた。
「大晦日とは、何をするのだ?」
悠真が小さな声で耳打ちしてくる。
「年を越す前にみんなでご飯を食べて、テレビを見たり、年越しそばを食べたりするかな」
「ほう」
私自身も家族で過ごす大晦日なんて久しぶりだった。
正直、昔どんな風に過ごしていたのか、あまり覚えていない。
夕食の準備が整い、
私たちは家族みんなで食卓を囲んだ。
他愛もない話をしながら食事をしていると、
祖母が懐かしそうに口を開いた。
「そういえば、今日みたいな満月の大晦日に、千紘が突然いなくなったことがあったねぇ」
「あった、あった」
母も思い出したように頷く。
「そんなことあったっけ?」
私は首を傾げた。
全く覚えていない。
「そうよ」
母は笑いながら続ける。
「家族みんなで探したのよ」
「朝方になって、ようやく見つかったんだから」
「どこで?」
自然と声が漏れた。
母と祖母は顔を見合わせる。
そして静かに答えた。
「軽之神社」
その名前を聞いた瞬間、胸がドクンと大きく鳴った。
「その時ね」
祖母は私を見つめる。
「あなた、不思議なことを言ってたのよ」
「不思議なこと?」
「『綺麗な女の人とお話ししてた』って」
その言葉に、部屋の空気が静まり返る。
「綺麗な……女の人」
どこかで聞いた。
あの神社で聞こえた、あの声。
――千紘。
あれは。
あの人だったのだろうか。
「千紘」
悠真が心配そうに私の顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
「え?」
気づくと、私は箸を持ったまま固まっていた。
「う、うん」
私は無理に笑顔を作る。
「なんでもない」
そう答えた。
でも。
胸の奥がざわつく。
思い出せそうなのに、思い出せない。
いや――
思い出してはいけない。
そんな気がしてならなかった。
もし思い出してしまえば、
今の穏やかな毎日が終わってしまう。
そして――
悠真が、私の前からいなくなってしまう気がした。
帰る頃には、空は茜色から群青色へと変わり始めていた。
母は台所で夕食の支度をしている。
父はもう日本酒を飲み始めていた。
「大晦日とは、何をするのだ?」
悠真が小さな声で耳打ちしてくる。
「年を越す前にみんなでご飯を食べて、テレビを見たり、年越しそばを食べたりするかな」
「ほう」
私自身も家族で過ごす大晦日なんて久しぶりだった。
正直、昔どんな風に過ごしていたのか、あまり覚えていない。
夕食の準備が整い、
私たちは家族みんなで食卓を囲んだ。
他愛もない話をしながら食事をしていると、
祖母が懐かしそうに口を開いた。
「そういえば、今日みたいな満月の大晦日に、千紘が突然いなくなったことがあったねぇ」
「あった、あった」
母も思い出したように頷く。
「そんなことあったっけ?」
私は首を傾げた。
全く覚えていない。
「そうよ」
母は笑いながら続ける。
「家族みんなで探したのよ」
「朝方になって、ようやく見つかったんだから」
「どこで?」
自然と声が漏れた。
母と祖母は顔を見合わせる。
そして静かに答えた。
「軽之神社」
その名前を聞いた瞬間、胸がドクンと大きく鳴った。
「その時ね」
祖母は私を見つめる。
「あなた、不思議なことを言ってたのよ」
「不思議なこと?」
「『綺麗な女の人とお話ししてた』って」
その言葉に、部屋の空気が静まり返る。
「綺麗な……女の人」
どこかで聞いた。
あの神社で聞こえた、あの声。
――千紘。
あれは。
あの人だったのだろうか。
「千紘」
悠真が心配そうに私の顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
「え?」
気づくと、私は箸を持ったまま固まっていた。
「う、うん」
私は無理に笑顔を作る。
「なんでもない」
そう答えた。
でも。
胸の奥がざわつく。
思い出せそうなのに、思い出せない。
いや――
思い出してはいけない。
そんな気がしてならなかった。
もし思い出してしまえば、
今の穏やかな毎日が終わってしまう。
そして――
悠真が、私の前からいなくなってしまう気がした。