私が拾ったのは、千年前の皇子様でした

第28話 過去と現世

胸が苦しくなる。

「それじゃあ……」

私は震える声で尋ねた。

「本当は、何があったんですか?」

皇女は静かに比翼塚へ目を向けた。

「歴史には、私たちが共に命を絶ったと伝えられています。ですが、それは偽りです」

「え?」

「私たちは追手に襲われました。私は兄上様を庇い、この地で命を落としたのです。」

「そんな……」

「兄上様だけでも生きてほしかった。それだけが、私の願いでした」

私は唇を噛みしめる。

「じゃあ……どうして悠真だけが……」

「兄上様の命を守るため、時の流れが兄上様を現代へ導いたのでしょう。私は魂だけが、この場所に残りました。」

私は言葉を失った。

「じゃあ……悠真は私のところへ来るよう、最初から決められていたってこと?」

皇女はゆっくりと頷く。

「兄上様には、幸せになってほしかった。私は、それだけを願い続けてきました」

涙がこぼれる。

「でも……そんなことをしたら……」

「悠真は、あなたを知ったら元の時代へ戻ろうとする」

皇女は静かに微笑んだ。

「だから私は、兄上様には姿を見せず、この場所から見守り続けていたのです」

「兄上様は……」

その時だった。

「千紘!」

聞き慣れた声が響く。

振り返ると、悠真が立っていた。

「何をしている」

ゆっくりと近づいてきた悠真は、皇女の姿を見た瞬間、息を呑む。

「お前……なのか……?」

震える手で、皇女の頬へ触れる。

「なぜ……こんなところに……」

皇女は静かに微笑んだ。

「兄上様。覚えておられないでしょう。
私は、この地で命を落としました。
兄上様を守るために」

「そんな……馬鹿な……」

悠真はその場に膝をつく。

「私は幸せでした。兄上様を守れたのですから」
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