私が拾ったのは、千年前の皇子様でした

「先輩、ランチいきましょ!」

昼休みに、声をかけてきたのは結奈ちゃんだった。

「いいね〜どこいく?」

「私、オムライス食べたいです!」

「いいね!行こう!」

そう言って、私たちは会社のすぐ近くにある、
喫茶店へ向かった。

「いらっしゃいませ。二名様ですね」

「はい」

「こちらの席にどうぞ」

通されたのは二人席。

店内は決して広くないが、レトロ感があり、
若者にも人気なお店だ。

「先輩は何にします?私は決まってるので」

結奈ちゃんは、そう言って、
メニューを手渡してくれた。

「私も、オムライス食べようかな」

そういえば、朝を食べ損ねたので、
お腹がペコペコだ。

「いいですね!」

結奈ちゃんは、嬉そうに言った。

私たちは、オムライスを二つ注文する。

すると、突然、結奈ちゃんが身を乗り出して、
顔を私に近づけた。

「ど、どうしたの?」

「先輩、男ですか?」

「……へ?」

思わぬ質問に、頭がパニックになる。

ダメだ!

ここで動揺したら、さらに追求されるに違いない。

「そんなんじゃないよ〜」

そう言って、結奈ちゃんから目を逸らす。

「あはは!先輩わかりやすすぎです!」

結奈ちゃんは、お腹を抱えて笑い出す。

「ちょ、違うってば!」

「大丈夫ですよ!誰にも言いませんから!」

「違うって!」

「どんな人ですか?イケメン?年齢は?」

結奈ちゃんの質問責めが止まらない。

「まさか……一ノ瀬部長と!?」

「違う!違う!」

「よかった〜」

「まぁ、一ノ瀬部長は、女性社員の憧れだもんね〜」

「はい!私も崇拝してます!」

崇拝って、何かの宗教じゃないんだから。

一ノ瀬 玲司部長。

32歳で部長にまで上り詰めた、エリートだ。

顔はもちろんのこと、性格、学歴、体型、仕事ぶり、
女性社員への気配り等で人気が高い。

クール系で、笑顔を見せることは少ないものの、
口調も優しく、部下への説教などもしない。

いわゆる完璧、エリートイケメンなのだ。

「そんな結奈ちゃんは、部長のことどうなの?」

「いや〜部長は推しに近い存在ですからね〜」

「推し……」

「だから、恋愛感情はないかも」

「そう言うもんなんだ」

私も、会社に入った当初は、一ノ瀬部長に、
憧れた時もあった。

あれが、恋愛感情だったのかは、わからないけど。

「お待たせしました。オムライス二つです」

そうこうしているうちに、オムライスがやってきた。

「美味しそ〜」

そう言いながら、
結奈ちゃんはオムライスの写真を撮っている。

最近の子って、
本当に女子力高いな……

そんなことを思いながら、
私はスプーンを口へ運ぶ。

ふと、今朝のことを思い出した。

「気をつけてな」

優しく笑った悠真の顔。

その瞬間、胸の奥が少しだけ熱くなる。

……ダメダメ。

私は慌てて、オムライスを口いっぱいに頬張った。
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